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2021-12-01

【Pair Signet Rings】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

今日もオーダーを頂き制作したシグネットリングと、それが包んでいる想いや感動を書いていくのですが、その前に皆さんに読んで頂きたい素敵な言の葉があるのです。

こちらをご覧ください。

【小人工房さんのブログ-『蔵出し作品・創り手たちの物語』】

本当に有難い。有難いという言葉しか出てこない程に感動しています。

小人工房さんのことは、KUBUSのブログをいつも読んでくださっている皆さんにはお馴染みだと思いますし、僕やKUBUSとの関係性は先程紹介した小人工房さんのブログをご覧頂ければお分かり頂けるかと思いますが、僕からの目線も少し書かせて頂きますね。

小人工房さんは僕の師匠であり、先輩であり、仲間であり、KUBUSにとってはもちろん、僕個人にとってもすごくすごく大切な存在です。

きっと、いや間違いなく、小人工房さんがいらっしゃらなければ今のKUBUSはありません。昔から手を動かして何かを創り出すことが好きだったので、何か表現活動を行なっていたかもしれませんが、このようなスタイルでシグネットリングを通して自身の想いを表現するといったことは間違いなくしていなかっただろうと思います。

”師匠”と聞くと、一般的には直接技術を教わった先生のような関係性かと思われるかもしれませんが、僕と小人工房さんとのそれはちょっぴり違います。

具体的な作り方というよりも、僕が抱いている想いや発信したい表現の輪郭の描き方を教えてくれたという方がフィットするかな。余計に分かりにくくしてしまいましたかね。汗

ここでいきなりですが、少し僕自身について書いてみます。

僕はいわゆる”組織”の中で上手くやっていけるタイプではありません。(いつもブログを読んでくださっている方は薄々感じていらっしゃるかもしれませんね。笑)大げさに”組織”と言いましたが、例えば学生の時の登下校のことを思い返してみてください。3人で歩いていても、僕は必ずと言っていいほど2人の後を追うような形で1人はじかれてしまうタイプでした。何人かで話している時、気が付くと周りの声がBGMのようになり、自分の中で想いを巡らせてしまったり、たまに発言をしたと思ったら「あれで良かったのかな」とまた自分の世界へ戻ってしまったり、、、。

1人でいることだけが好きで複数人との関係性を築くのが嫌いということではないのに、何故かポツンとしてしまうことが多い。と言うと、すごく寂しい人だと思われてしまうかもしれませんが、輪の中に入るよりも、一歩引いてみんなの楽しそうな表情を見ているのが好きという風に捉えてもらえるといいかな。ブログを読んでくださっている方の中にもそういう人いるかなと思います。いてくれたら嬉しいです。

そんな僕ですが、唯一”我がまま”に、つまり、”我のまま=自分のまま”にいられるのが、感じ考えたことを表現するということなんです。これに気付いた時、深く潜っていた水からブハーっと顔を出し息を吸い込むように、生きているということを実感できました。

「これしかない」そう思ったんです。頭と心が器用ではない僕にとって、これが生きる術だと。

とは言え、表現する方法はさっぱり。だから、とにかく出来ることや思い浮かんだ方法を実践し続けていました。

「とにかく今胸にある感情を表現したい。」そのために、ノートの端の落書き以外ほとんど描いたことがないのに絵を描いてそれを服にプリントしたり、それだけでは満足できず、装身具の世界に踏み出し、技術や知識なんて一つもないけど毎日創っていました。「表現をしたい」という衝動を抑えきれず、とにかく毎日毎日。

そんな中、ある想いが頭に浮かんできたんです。「もっと”表現すること=生きること”にしたい。」つまり、表現活動を生業にしたいということです。

ビジネスライクに作っている人は世の中に無数にいますが、アートな”創る”で生きていくというのは世の中一般の価値観では茨の道ですよね。でも、それをするんだと。

険しい道に向かっていくのに、ふと足元に目をやると靴を履いていないことに気が付きました。

まさにその瞬間、『彫金やりたい人いますか?』という小人工房さんの発信を見つけ、もちろん飛びつきました。

「僕に靴をください」ポッケをひっくり返し、その時の持ち物全て見せてこれが僕ですと。あの道に行きたい。その先の世界をこういう風に彩っていきたい。そのためには何から始めたら良いですか?

そんな想いでぶつかったところ、彫金の世界を歩んでいくためにまず必要な道具と小人工房さんの制作に対する想いを教えてくださりました。そこに込められたメッセージから「大丈夫。君は1人じゃないよ。」と背中を押してもらえたような気がして本当に嬉しかった。

それから数年、靴擦れしながら今でも歩いています。時々うずくまってしまう程に苦しいこともあるけど、小人工房さんをはじめ素敵な仲間や家族や友達、ご依頼をくださる皆さんや応援をしてくださる皆さんの温かさに触れる度に立ち上がることができます。もうあの時のように一人ではないから。

シグネットリングと手彫り、そのデザインも全てオリジナル。制作の最初から最後まで一貫して自らでやる。もちろん、制作に取り掛かる前の打ち合わせも。

僕の知る限り、このKUBUSのスタイルと同じ方法を採っているシグネットリングメーカーはいません。

弱々しかった僕が、今ではこうして茨の道を切り開き、そこを彩りながら進むことができているのは、あの時裸足で手ぶらの僕に靴と歩んでいく勇気をくれた小人工房さんのおかげです。

長くなってしまいましたが、感動を皆さんに伝えたいという想いと、ありがとうを表現したくて書いてみました。


それでは、ここからはご依頼を頂いたシグネットリングの紹介をしていきますよ〜!

なぜシグネットリングの紹介と先程の物語を分けなかったのか、これには実は理由があるんです。

小人工房さんは北海道で制作をされていらっしゃいまして、今回のブログで紹介をするシグネットリングをオーダーくださったお二人も北海道の方なんです。もちろん、それだけじゃないのですが、それはこの後お伝えしていきますね。

お二人がお付き合いをされて5周年を迎えられるということで、その記念となる品をお探しだったところKUBUSを見つけてくださりました。

KUBUSから生み出してきたジュエリーの数々だけでなく、それに取り組むスタイルや姿勢にまで魅力を感じてくださり、この度ペアシグネットリングをご依頼頂けることとなりました^^

なんと、お二人のプロフィールとお写真を添えて「どんなシグネットリングにしたいか」ということを真剣に、そしてユーモアたっぷりにぶつけてきてくれました。

普段、お伝え頂くお言葉の端々までじっくり目を通し、そこからこれでもかと考え感じるということを行なっている僕にとっては、こんなにもお二人のお人柄に触れることができれば、もうすぐに、シュピーン!!!心の触覚があっという間に「こんなシグネットリングがお似合いになるだろう」ということをキャッチ。

まるでその確認作業をするように「こんな感じはどうですか?こんなこともできますよ」とお伝えしながら、お二人と一緒にどんなシグネットリングにしていくかという輪郭を描いていきました。ただ、流石に号数については僕のバリバリの感覚を持ってしても写真からだけでは分からないため、お二人のご協力を頂きながら。

号数採寸のためのリングゲージと一緒にサンプルのシグネットリングもお送りしていましたので、それを基準にシグネットリングのフェイスサイズ等もご検討頂きました。

彼女さんご着用分についてはフェイスサイズを一回り小さくするだけでなく、より指に馴染むよう全体的な厚みも手指のバランスに合わせて薄くしたいということで、これまたお写真を送って頂きまして、それを見て僕は内心(「うんうん。大丈夫。なぜならもう僕の中にはどんなシグネットリングがお似合いになりそうかイメージができているから。」)と、自分でも何だか鼻につくほどに自信たっぷりでしたが、勝手に突っ走ってはいけませんので、造型作業がある程度できたら途中フィッティングでご確認頂くということで提案をさせて頂きました。

おっと、今日はもう既に沢山綴ってしまったのにまだ写真を載せていないですね。汗 

お二人から頂いたメールを何度も読み返したり、お二人の写真を見て「ここをもっとこうだな。」と、触覚をチューニングしながら造型作業を行いまして、形づくることができた姿がこちら!

粗削り完了

粗削り完了2

写真左側が彼女さんご着用分の「Ovalシグネットリング(Face size:12mm×10mm)」、右側が彼氏さんご着用分の「Ovalシグネットリング(Face size:13mm×11mm)」です。

違いが写真から伝わっていれば良いのですが、フェイスの大きさが違うだけでなく、腕部分(着用時に掌側にくる部分)の太さや全体的な厚みなどが違うことをお分かり頂けますでしょうか?

これがいつも僕が言っている、同じフェイス形状でもフェイスだけが狙ったサイズになっていればそれで良いということではないということです。シグネットリングはそのフェイスに注目が集まりがちですが、あくまでも全体のバランスが整っていてこそなんです。これを分かっていないシグネットリングが世の中には多すぎる!(おっと、いけね。汗 笑)

感覚派な斎藤丸出しでお二人の姿を思い描きながら、それと同時に、論理派な斎藤剥き出しで知識と経験に基づき造型をしていきました。でも、念のためお二人の手でご確認。

大丈夫なはずだと思いつつも、やっぱり少しドキドキ。

よし!バッチリだと合格を頂きまして、いよいよ手彫りへ進んでいきます。

事前にいくつかデザインを作成し、お選び頂いたモノグラムがこちら!

彼氏さんのシグネットリングへモノグラム下書き

今回はお二人お揃いのモノグラムでというご依頼ですので、彼女さんご着用のシグネットリングにも下書き。

彼女さんのシグネットリングへモノグラム下書き

お二人のイニシャルを組み合わせた「SR」のモノグラム。こうしてデザインが出来上がっていると想像しにくいかもしれませんが、生み出すまでにはかなり頭を捻りました。

お二人から伺ったモノグラムのテーマは、『ダンディおじさん』と『品あるレディー』。

これをそれぞれのモノグラムで表現するのではなく、お揃いのモノグラムで表現をしていく必要があります。

そのために、男性的もしくは女性的に寄せすぎてしまうのではなく、性別で分けられてしまうことのないような印象にしていくことを意識しました。

ただ、それで淡白なデザインになってしまうのでは元も子もありません。もちろん、KUBUSから生み出すシグネットリングである以上、そうはさせません。

自由で大胆に曲線を使い、どこか踊っているような明るい雰囲気に。とは言え、縦横無尽に曲線を踊らせるのでは落ち着きのない印象になってしまいますから、「S」と「R」を構成する要素をなるべくシンプルにすることでバランスをとり、激しく飛び跳ねるように踊っているのではなく、お二人で手を取り、腰に手を当てながら踊っているようなモノグラムにしていきました。

と、このような意味が込められたモノグラムなのですが、お二人にデザインを提案する際にもこのような内容の説明をさせて頂いたんです。

そこで驚くべきことが、、、。

実はお二人が出会うきっかけとなった趣味が”踊り”だったそう。「いやいや、斎藤知ってたんでしょ。」いーやいやいや、聞いていないんですよ?ほんとに!KUBUSはこういうミラクル多いんです。これでもかと感覚を研ぎ澄ましてデザインしたからこそ、見えない力が働いたのかもしれませんね(^^)

それでは、手彫りをしていきましょう!

実は同じデザインを同じように彫るのってちょいと難しいんです。しかも、こちらのお二つはフェイスサイズが違いますから、そこにモノグラムが同じように込められている必要があります。

二つを並べて見比べながら彫り進めていきます。その様子を撮影した映像がありますので、よろしければこちらも併せてご覧くださいませm(__)m


手彫りをしている姿

無事にお揃いで込めることができた姿がこちら。

手彫り完了

手彫りを終えるとその安心感からかヘロヘロになってしまいますが、まだ終わりませんよ〜。

リングの裏面へお二人の記念日を打ち込んでいきます。

リング裏面へ数字の刻印

もちろん、一打一打に想いを込めて。

二つ揃って仕上げ磨きをしたら、この世に二つと、、、いや、三つとない特別なシグネットリングが遂に仕上がりました!!よーーーーし!!!

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成2

ちゃんとお揃いな雰囲気でありながら、

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成3

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成4

各部の太さや厚みをご要望に合わせて制作させて頂きました。

裏面にはお二人の記念すべき日を。

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成5

【Pair Signet Ring】Hand Engraved Oval Signet Rings「SR」(Brass)_完成6

記念プレート

これまた手彫りで制作年月のプレートを作り、リングケースと一緒に紐でキュキュッと。

これで終わらないのがKUBUS。飛び上がってしまうほどに嬉しい出来事がまだあるんです。

実はシグネットリングがお二人の元へ届いたのが、なんとご依頼をくださった彼女さんのお誕生日!そして、なんとなんと!!その日に彼氏さんからのプロポーズがあり、晴れてご婚約!!!

ぐ〜っ!めでたい!本当におめでたい!

ここまで書いていて分かりました。こんなに沢山のミラクルが重なったのはKUBUSが凄いんじゃないや。笑 間違いなくお二人が引き寄せてる。

そんな大好きなお二人から素敵な素敵なご着用写真を頂きました(*^^*)こりゃもちろん、僕だけが独り占めしちゃうんじゃあバチあたる。

皆さんにもお裾分けです^^

ご着用写真_お二人で

ご着用写真_奥さまのお手元

ご着用写真_旦那さまのお手元

リングケースと手紙

ご依頼くださったSさん、Oさん、本当に有難うございました。そして本当に本当におめでとうございます!!お二人のお付き合い5周年記念だけでなく、お誕生日、そしてご婚約という大切な節目にまで関わらせて頂けたこと、すごく嬉しいです。お二人とのやりとりは、僕が言うのもなんですが、お客さんとお店という堅苦しいものでは全くありませんでしたね。縁あって出会うことができ、一緒に記念すべき品を創り上げるために、楽しく、真剣に、とことんピュアに、心と心で繋がることができたと感じています。それもこれもお二人の温かさと、いつでも両手を広げていてくださる包容力があるからこそです。そのおかげで真っ直ぐに制作に向き合うことができました。これからお二人が描いていく人生にこの二つのシグネットリングが彩りを加え続けることができたら最高に光栄です。神奈川へいらっしゃる際にはご飯でも行きましょう^^お二人と直接お会いできる日を楽しみにこれからも創り続けていきます。

”オーダーをくださった方と共に特別なシグネットリングを創り、それを通して感動を生み、共有する”

これまでも今も大切にしていることが間違っていなかったのだと改めて実感することができた、かけがえのない経験でした。

あの時見ていた茨の道には、ちゃんと花が咲いています。


KUBUS 斎藤

最後までご覧頂きありがとうございました!

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【創り手仲間】

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コメント1件

  • 小人 より:

    お邪魔します🕵🏻‍♂️

    kubusさん、しかと読ませて頂きました。
    大変に恐縮ですが、そのように思って頂いてたんだなぁと、数年越しにまた感動の嵐でございます。心温まるお話をありがとうございます。

    北海道からのオーダー品、これまた最高な仕上がりですね。
    在るべき世界にいる姿が1番いい表情している、間違いないと思います。

    人体に寄り添えるボディバランスとサイズ感。
    モノグラムデザインの力強さとしなやかさ。
    緻密な計算と感覚を研ぎ澄ます同時作業。
    その全てを高い集中力で行った姿が浮かびます。生命が込もっておりますね!画像からもバシバシ来てます。
    素晴らしい、最高、もっと見たい。笑

    こちら小人工房では
    当時のナットリングを手にとり、しみじみ眺めて居りましたよ。
    僕たちを繋いでくれた六角ナットが何かを強く訴えてきます。笑
    内なる声に耳を澄ましてみますね👂✨

    想いに共感してくれるオーナー様たちと彩る世界、互いに築き上げて行きましょう。

    全ては大丈夫です、無限の可能性を繰り広げてやりましょう、マグマのように煮えたぎるこの情熱で🕵🏻‍♂️✨

    いつ何時も北海道から静かーに見守ってます。
    kubusさんの存在は僕にとっても力強く心温かく励みになっておりますよー!

    茨の道を選んだ仲間より

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