toggle
2024-04-04

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング<後編>

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

図らずも長編のブログになってしまい、今回は前・後編に分けてお送りしております。後編では、いよいよご依頼品紹介へと移ってまいります!(前編がまだの方はこちらからご覧ください→『自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング<前編>』)

ご依頼いただいたテーラーの清水さんが営むThe My Wayへは、毎年周年記念のタイミングで遊びに行かせてもらっていて、今回のシグネットリングを制作させていただくにあたり、昨年の9周年記念パーティでお会いした際に(2024年4月19日訂正:昨年はパーティがなかったのでお会いしてお話を伺ったのは一昨年でした)どのようなシグネットリングが良いかご希望を伺いました。

そして決まったのが以下の内容です。

  • 素材:K18YG
  • 形状:Ovalシェイプ
  • フェイスサイズ:15.5mm×13mm
  • 全体のイメージ:各部を厚めにずっしりと
  • 手彫りモノグラム彫刻(フェイス):「TMW」+「テーラーに関する模様やモチーフ」(デザインの方向性:”紋章のようなデザイン+模様やモチーフ”(『モノグラムの手彫り彫刻』内④のデザインの方向性))
  • 彫刻の向き:反転彫り(スタンプをした時に正しい向きになるようにシグネットリングにはデザインを反転させて彫刻すること)
  • 手彫りモノグラム彫刻(側面):「AM」(”筆記体をもとにした流れるようなデザイン”(上記リンク内①のデザインの方向性))

シグネットリングに込めた意味合いは後ほど説明させていただくとして、まずは造型作業を終えたシグネットリングの姿からお披露目です。

造型作業を完了したシグネットリングの様子

造型作業を完了したシグネットリングの様子_少し上から

『各部を厚めにずっしりと』というご希望を再現していくにあたって、闇雲に厚くすれば良いという訳ではもちろんありません。着用時に邪魔になってしまうようでは日常的に着けられませんから、不要な張り出しや厚みは抑えて着けやすいように。持った時のずっしりとした重量感によって”特別な逸品”ということを感じさせながらも、全体の重量バランスを整えることでその重みがストレスにならないように気を付けながら制作しました。

彫刻をするモノグラムデザインについては、”The My Way”の頭文字「TMW」と模様やモチーフを組み合わせるというご指定だけで、清水さんからは今回のシグネットリングをご依頼いただくにあたって、ほとんどお任せと言って良いほどにどのようなデザインにするかやそこにどのような意味を込めるかについて一任してくださり、特にこれといった指定はありませんでした。

ですが、お店としてのThe My Wayの軌跡はインスタグラムやブログでこれまで見させていただいてきましたし、毎年広島へ行く度に清水さんにご飯に連れて行っていただいて、お互いの夢を語り合ってきました。だから、いざデザインとして表現するとなると、表現したいことが多すぎてどの側面にフォーカスを当てるべきなのか迷ってしまい、それを定めるのに時間がかかってしまいました。

創業10周年というのは一つの大きな節目ではありますが、そこがゴールではなく通過点にしなくてはいけません。これまでの10年の積み重ねの上に立ちながら、その先の未来も感じさせるようなデザインにする必要があります。

これから10周年の節目を迎え、より一層”The My Way”という名前に込めた願いが清水さんにとって大切なものとなると思い、自らの歩んできた道のりを振り返り、これから歩むべき道を改めて見据えるような意味合いを込めたいとモノグラムを描かせていただきました。

そうして描き上がったデザインがこちらです!普段はデザイン画をあえてブログに掲載しないようにしているのですが、今回は載せてみようと思います。

TMW+メジャー+針と糸のモノグラムデザイン

著作権保護のために透かしを入れているので少々見づらいかもしれませんが、店名の”The My Way”の頭文字「TMW」と、テーラーには欠かせない「メジャー」と「針と糸」を組み合わせてモノグラムを描かせていただきました。

中央に真っ直ぐと立つ「T」にはどんな時でも自らの信念に正直にいる姿を、直線を主としながら端には植物が伸びていくような曲線を入れた「M」には、そうした実直さがあるからこそこれまでの成長があり、そしてこれからもそれが続いていくという様子を表現しました。

「T」と「M」には強さや実直さを主体に描いていきましたが、それだけではThe My Wayさんを表現するには不十分だと考えました。なぜなら、清水さんのお人柄もそうですし、The My Wayというブランドも、単に直球ストレートを投げ続けているようには僕からは見えないからです。そこで、自らの道を歩んでいくために必要な頑固さと同じくらいかそれ以上に必要な”柔軟性”を表すべく「W」を描いていきました。

その「W」をテーラーがお客さんの採寸時に首にかけている「メジャー」のようにも描くことで、”普通”という誰が決めたか分からない凝り固まった尺度ではなく、自らの物差しで良し悪しを測ることの大切さも表現しました。

そして、デザイン下部に描いた「針と糸」には、どんなに大きな成果をもたらす事柄でもそれは一針一針の積み重ねでしか成し得ず、どんなに大きな問題でも一針一針解いていけば解決できるといったことを表現しました。これは良い縁を結び、悪い縁を裁ち切るといった意味にもなっています。

これまで清水さんが一歩一歩”The My Way”を歩んできたからこそ10周年を迎えることができ、これからもその一歩一歩の積み重ねがThe My Wayを作るのだという想いをこちらのモノグラムデザインに込めました。

デザインご提案時点で既に清水さんから『最高!』というお言葉を頂けてもちろん嬉しいのですが、シグネットリングとして仕上がった姿を見てこれ以上の気持ちになってもらえるようにしなければと、更に高くなったハードルを見上げながら彫刻机へ向かいます。

彫刻にあたって、まずはバランスを見るためにシグネットリングへ下書きをしていきます。※「反転彫り」ご希望なので、先ほどのデザイン画を反転した状態で下書きしています。

TMW+メジャー+針と糸のモノグラムをシグネットリングへ下書き

いざ手彫り彫刻開始!少しずつ少しずつ彫り進めていきます。

まずは「W」と「針」の部分を。「W」は「メジャー」でもあるので、ひらひらとリボンが舞っているように見せる彫り方をします。そして、その間を「針」が通るように彫っていきます。

「W」と「針」彫刻完了

その他の部分も彫り進めていきます。こうした何層にも重なっていたり、立体的に交差するようなデザインの場合はかなり長丁場になりますので、目薬と気分転換が欠かせません。

シグネットリングの制作は全てにおいて根気が要りますが、手彫り彫刻は最もそれが必要な工程です。

手彫り彫刻中の手元

手彫り彫刻中の手元_アップ

彫り始めてから何度か朝と夜がバトンタッチしましたが覚えていません。笑 それだけ時間がかかってしまいましたが、彫れました。

「TMW+メジャー+針と糸」のモノグラム彫刻完了

しっかりとメジャーの目盛りも彫り込んでいます。

「TMW+メジャー+針と糸」のモノグラム彫刻完了2

「TMW+メジャー+針と糸」のモノグラム彫刻完了3

「TMW+メジャー+針と糸」のモノグラム彫刻完了4

角度を変えて見ると、立体的に交差しているのがよりお分かりいただけるかなと思います。

それでは。仕上げ磨きをして、、、と言いたいところですが、まだ側面への彫刻もあります。

それがこちら!

側面彫刻「AM」モノグラム下書き

お二人の娘さんのイニシャルを組み合わせた「AM」のモノグラムをシグネットリングの側面にこちらも手彫りで彫刻していきます。仕事を頑張るお父さんを応援するように。

側面彫刻中の様子

側面彫刻中の様子_手元のアップ

こちらも無事に彫刻完了です!

側面彫刻「AM」モノグラム_彫刻完了

側面彫刻「AM」モノグラム_彫刻完了2

これにて手彫り彫刻は全て完了です!

シーリングスタンプ前の煤を付けた状態

仕上げ磨きをしたら、遂に!遂に完成です!!!

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_完成写真

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_完成写真2

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_シーリングスタンプ

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_完成写真3

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_完成写真4

自らの道を突き進んでいく相棒としてのシグネットリング_完成写真5

フェイス裏には10周年を迎えられる年月日を機械彫りで入れさせていただきました。

フェイス裏「2024.11.14」機械彫り

このように一つのシグネットリングを作るのは簡単な道のりではありませんが、不思議なものでいつもこうして仕上がってしまうと制作中の苦労を忘れてしまいます。きっとそれは全力で走り切ることができたからなのだと思います。とても清々しい気分です。

一生懸命に制作したから送り出すのには名残惜しさもありますが、「大丈夫。抜群に格好良いから安心して行っておいで。相棒となってくるんだぞ。」と送り出します。(本当に声に出していつも言っています。笑)

そして緊張の瞬間。清水さんから『受け取ったよ!』とのご連絡が来ました。

『感動』『最高の相棒を手に入れた』とのお言葉に、僕も大喜び!本当に良かった。

同じ技術者として、腕を上げたことを認めてもらえたのもすごく嬉しかったです。

毎日のように自らの進歩の遅さに辟易として、時には何も手につかないほどに落ち込むこともありますが、清水さんと出会ってからの5年間でゆっくりでも確実に歩みを進めることができているのだと実感することができました。

作品にもそれが痛いほどに現れています。

5年前に制作した「TMW」を彫刻したシグネットリング

5年前に制作させていただいた「TMW」を彫刻したシグネットリング

今回制作した「TMW」を彫刻したシグネットリング

そして、今回制作させていただいた「TMW」を彫刻したシグネットリング

もちろん、5年前の作品もその時に持てる全てを注ぎ込んで制作したから今見ても後悔は全くありませんが、技術と表現力の差は一目瞭然。

決して簡単に作らず、この手で、正直に、自らの道を歩み続けてきたからこそこれまでの歩みを振り返り、そしてこれから行く先を見据えることができます。

ご依頼を頂き、清水さんのためにと制作させていただいたシグネットリングによって、そこに込めた意味がそのまま自分にも跳ね返り、僕にとっての”The My Way”にも思いを馳せる貴重な機会となりました。

The My Wayの清水さん、この度はご依頼本当に有難うございました!そして、まだ数ヶ月先ですが10周年おめでとうございます!!これからもお互い自らの道を突き進んでいきましょう。

お受け取りの際に清水さんから頂いた写真も皆さんにお裾分けです。

ラッピング(リボンの面)

ラッピング(シーリングスタンプの面)

The My Way清水さんのご着用写真

KUBUSの歩みについても触れたこともあって、今回のブログは前・後編に分けた長編となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?

お互いブランドを持っていて以前から関係性がある間柄なので、今回は普段のブログでは詳細に書かないようなところにも触れてみました。

”署名の指輪”であるシグネットリングを制作させていただくうえで、ご依頼くださった方からパーソナルな事柄に関して伺うことも少なくありませんが、それをブログで公開する訳にはいきませんから書いていないだけで、KUBUSで制作させていただくどのシグネットリングにも文字では書ききれないほどの物語があります。

今回のブログを通して、”シグネットリングには意味があるべき”というKUBUSの考えが伝わり、そして僕が大好きなシグネットリングの魅力が皆さんに少しでも届いていれば嬉しいです。

最後まで読んでいただき有難うございました!また次回のブログでお会いしましょう。


KUBUS 斎藤

【Gallery】Hand Engraved Oval Signet Ring(K18YG) 「TMW+メジャー+針と糸」+「AM」

【KUBUSの各種リンク】

【創り手仲間】

関連記事