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KUBUSの手彫り彫刻技法

現代ではシグネットリングへ彫刻を施すのにいくつかの方法があります。その中には何世紀にもわたって存在している技法もあれば比較的新しいものもありますが、KUBUSで採用しているのはその中でもかなり古典的な彫刻スタイル。

キノコのような丸みを帯びた持ち手に「タガネ」と呼ばれる刃を差し込んだ独特な形状の道具を使用して行います。

KUBUSで使用しているタガネ

KUBUSで使用しているタガネ(一部)

タガネは手の大きさに合わせて調整したり、刃の先端を好みの形状に加工したり、一つ一つ彫刻家自身が仕立て、デザインに合わせてあらゆる種類を使い分けながら彫刻していきます。

持ち手の部分を手のひらで包むように握り、押し込みながら彫り進めていくことから、この技法は「Push Engraving」や「Hand Push Engraving」などと呼ばれます。

フェイスに手彫りしている様子

手彫り中の手の動き

この技法の発祥時期や地域に関しては諸説ありますが、以下の絵画から少なくとも500年以上前から用いられている彫刻技法だということが分かります。

St. Eligius in his workshop

St. Eligius in his workshop(1515) ※参考文献⒈(参考文献一覧は文末に記載。以下、参考文献がある際は数字のみの表記とする。)

St. Eligius in his workshopの拡大写真

拡大画像

こちらの絵が描かれたのは1515年。先ほど紹介したキノコ型の道具が描かれているのが確認できます。

手の力だけで彫り進めていくこの彫刻技法は、彫刻家の手や肩に非常に負担がかかるため、高い忍耐力を必要とします。また、それと同時に、力を入れながらの緻密な作業が求められるので、高次元の技術も求められます。

彫刻時の姿勢

そのため、現代ではこうした伝統的な技法を用いる彫刻家は非常に少なく、伝統工芸の保護を行うイギリスの団体『HERITAGE CRAFTS ※⒉』ではこの手彫り技法を”Endangered(絶滅の危機にある)”と認識し、イギリス手彫刻師協会(Hand Engravers Association of Great Britain ※⒊)等の機関が支援を行っているほどです。

そうした技術的・身体的な敷居の高さを解消すべく、彫刻時の力をコンプレッサーの動力で補助する「エングレービングマシン」や、機械で彫り進めていく「ロータリー機械彫刻」や「レーザー彫刻」等が誕生し、現代ではこうした方法で彫刻を行うのが主流となっています。

もちろん、そうした技術の進歩は歓迎すべきです。

しかし、伝統的な手彫り技法を用いて制作した作品には、芸術的感性やそれを表現する能力・判断力、細部への拘りがそのまま現れ、彫刻家のスタイルを色濃く映します。機械では成し得ないのはもちろん、他の誰にも同じ作品は作れないという強力な特徴が伝統的な手彫り技法にはあるのです。

シグネットリングはそれが着用者自身のものであるという真正性を第一の存在理由としています。つまり、他と同じではあってはならず、簡単にコピーされることがあってもいけません。

したがって、KUBUSではシグネットリングへ彫刻を行う上で伝統的な手彫り技法が最も相応しいと考えており、シグネットリングの真正性を更に高めるために、それに加えて彫刻を行うモノグラムや紋章等のデザインをご依頼毎に独自に作成しています。

彫刻家の手の力のみによって彫刻を施されたシグネットリングからは、力強さと繊細さが共存したえも言われぬオーラが感じられます。


    【参考文献】

  1. 『File:Eligius 1515.jpg』(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Eligius_1515.jpg
  2. 『HERITAGE CRAFTS』(https://heritagecrafts.org.uk/hand-engraving/
  3. 『Hand Engravers Association of Great Britain』(https://www.handengravers.org.uk

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