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2023-10-09

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

ここ数日で一気に寒くなってきたので、早くも股引を履いて制作作業に励んでいます。今年こそ彫金机の足元に電気ストーブを設置しようかな。皆さんもお身体冷やさないようにされてくださいね。

さて、本日のブログで紹介をするご依頼品は『名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング』です。シグネットリングが只者ではない装身具であることがとても良く分かる姿に仕上がったと感じています。それが皆さんに少しでも伝わったら嬉しいです。

それでは参りましょう!

ご依頼くださった方へ各種金素材のそれぞれの特徴についてお伝えしながら、まずは使用する素材について打ち合わせをさせていただきました。

せっかくなので、最近はあまり素材についての講義的なことをしていませんでしたから、ご質問を頂くことが多い金素材についてここで少し紹介してみようかと思います。

金(ゴールド)は24分率でその含有率を表すため、純金は「K24」と表記します。したがって、「K18」は75%(=18/24)、「K14」は58.4%(≒14/24)、「K10」は41.7%(≒10/24)、「K9」は37.5%(=9/24)、金が含まれているということが言えます。

ゴールドジュエリーとして用いられる素材は、上記の割合の金の他に主に銀や銅を組み合わせて(割金)作り出されます。その銀や銅の割合を調整したり、更にその他の金属を混ぜることで色味を調整して作り出されるのが「ピンクゴールド(PG)」や「ホワイトゴールド(WG)」といった素材です。

※KUBUSではK18YGなどと記載をすることがありますが、これは一般的に「K18」と表記されているものと同様です。このように一般的に色味について併記されていない場合は基本的にイエローゴールドを指しますが、KUBUSではPG(ピンクゴールド)やWG(ホワイトゴールド)も用いることがあるため、あえてイエローゴールドを表す際には”YG”と併記することがあります。

素材についての豆知識は他にも色々とありますが、それはまたの機会に。

それでは、ご依頼品の紹介へ戻りましょう。素材に関してお伝えした後、リングゲージとサンプルシグネットリングをお送りし、号数やシェイプ(形状)及びフェイスサイズについてもご検討いただき、シグネットリング本体のご希望は「Ovalシェイプ(フェイスサイズ:14mm×12mm) K18YG」に決定しました。

彫刻に関してはまた後ほど紹介するとして、まずは造型作業を完了した写真をご覧ください。

造型作業完了

表面をある程度まで研磨したら、彫刻するモノグラムデザインを下書きしていきます。

E_モノグラムデザイン下書き

こちらのデザインはご依頼くださった方の名字の頭文字「E」を使って装飾を加えながらオリジナルで作成させていただいたモノグラムです(”紋章のようなデザイン+模様やモチーフ”(参考ページ:【モノグラムの手彫り彫刻】))。

※反転彫り(スタンプをした際に正しいデザインの向きになるよう彫刻すること)ご希望のため、デザインを反転させてシグネットリングに下書きしています。

名前(下のお名前)ではなく名字をシグネットリングへ刻むこととなったご依頼くださった方の想いを表現しながら、門扉に飾られていても違和感のないようなデザインを作成させていただきました。それによって名字を冠するのに相応しいモノグラムとなりました。

こちらのモノグラムをデザインしていく上でもう一つ意識をしたポイントは、ご依頼くださった方が抱かれていた『Eを反転させるとカタカナの”ヨ”に見えてしまう』といったご心配を払拭すること。直線的にEを描いてしまうと反転させた時にヨに見えてしまうため、あまり直線を多用し過ぎないように。ただ、曲線ばかりではEを描いたモノグラムであるということが分からなくなってしまいますから、そうしたバランスにも気を配りながら。更にそれと同時に、細かい装飾を入れながら描くことで、一文字のデザインであってもパッと見ただけでは簡単に何と書かれているか読み取れないようにし、デザインとしての奥行きもつけていきました。

それでは、シグネットリングの制作工程の大きな見せ場、手彫り彫刻へと工程を移していきます。

彫刻専用デスク

電力や空気の圧力といった補助を使わない、最も古典的な方法で彫刻をしていくため、狙った深さへ一気に彫り進めていくことはできません。少しずつ少しずつ、慎重かつ大胆に彫り進めていきます。それによって手彫りならではの繊細さと迫力が共存した、えも言われぬ存在感のシグネットリングが生まれます。

まずは大まかに輪郭を取っていきます。

輪郭彫り

そして、各部を彫り込んでいきます。

一部を彫り込んだ様子

5割程度彫り込めた様子

全ての部分を彫り込んだ状態

輪郭彫りと全ての彫刻を終えたそれぞれのスタンプを比べた写真

今回はシグネットリングを写すのではなく、スタンプだけで途中経過を表してみました。もったいぶりましたが、彫刻を終えたシグネットリングの写真をどうぞ。

E _反転彫り_彫刻完了

シグネットリングとスタンプ(最初と最後)を並べた写真

長かった彫刻作業を終えまして、仕上げ磨きをしたら遂に完成です!!

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング_完成写真

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング_完成写真2

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング_完成写真3

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング_完成写真4

自分で言うのも何ですが、KUBUSが作るシグネットリングは堂々としています。それは作り手である僕とご依頼くださる方々がシグネットリングで表現することに全力だからなのだと、こうして改めて作品を見ていると感じます。(制作中は必死だから自分が全力だなんて意識はないのです)

名字の頭文字を冠した重厚で品のある雰囲気のシグネットリング_完成写真5

オーダーくださったEさま、この度はご依頼本当に有難うございました!たまたまお誕生日の直前に仕上がり、お誕生日からご着用頂けたのも何か特別な縁を感じますね。びっくりしました。『本物の仕事』と作品から感じていただけて、こうして言葉でも発信をしていますが僕から多くを語らずとも作品が雄弁に語ってくれますね。

最近は自分がなぜここまでシグネットリングに全力なのか、感覚的でなくそれを言語化して分析したいと思い、「芸術とは」「美しさとは」「創るとは」「表現とは」「生きるとは」などと問いを立て、あらゆる芸術に触れたり本を読むなどしてヒントを得ながら思考を深めています。歴史的に芸術家が哲学を重視してきた所以を痛々しい程に実感しています。本気じゃないと本物は創れないということです。

簡単に安く作った物や人が作った物を自分が作ったかのようにもっともらしい言葉を並べて高く売っているところを見るとガッカリしてしまいますが、作品は嘘をつけませんから作品で皆さんに分かっていただけるよう、KUBUSはこれからも堂々としたシグネットリングを創り続けていきます。


KUBUS 斎藤

【Gallery】Hand Engraved Oval Signet Ring(K18YG)「E+模様」

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