蛇十字の紋章を彫刻したシグネットリング
こんにちは。KUBUSの斎藤です。
先日こちらの映画を観に行ってきました(こちらの予告編は開始10秒まで無音のため音量にお気を付けください)。
新たなローマ教皇を決める選挙”コンクラーベ”を描いた映画です。(『教皇選挙』公式サイト)
何というタイミングなのか、実際のローマ教皇も先日亡くなりあらゆる儀式が現在執り行われていて、これからまさにコンクラーベが開かれようとしています。シグネットリングが登場する映像作品を掲載している『Signet Rings in Film』で、ローマ教皇について描いた他の作品を以前に紹介していたこともあって、この作品が公開されてから気になっていました。そんな時この度のニュースを耳にして「今観なきゃ!」と作業部屋を飛び出して観て参りました。
ストーリーについては公式サイトや実際に映画をご覧いただくとして、僕はシグネットリングの制作を生業にしていますからそうした側面から少しだけ、、、。
劇中ではローマ教皇の死去の際に、身に着けていた教皇リング(”漁師の指輪”)が悪用防止のために破壊されたり、部屋を封印する際にはリボンと蝋封を使ったりと、シグネットリング好きならドキッとしてしまうシーンがちらほらありました。
映画の外でも蝋封による部屋の封印が先日実際に行われ、その映像をこちらから見ることができます(扉が閉じているかを確認する人たちの手に光る指輪にも注目です)。
今でもこうして重要な儀式の一つとして指輪や蝋封が用いられていることからも、やはりシグネットリングは単なるジュエリー以上の存在意義があるのだと改めて感じます。やっぱりシグネットリングって格好良い。
今回のブログで紹介をするのは「蛇十字の紋章を彫刻したシグネットリング」。シグネットリングがジュエリーの枠を超えて非常に特別なものだと感じていただくのに相応しい作品です。
蛇をクロスさせた紋章を刻んだシグネットリングを着けたいとお誕生日にご連絡を頂戴しました。基本的にはシグネットリング本体の形状やフェイスサイズ(印台サイズ)に関するご希望ありきでそれに合わせて彫刻デザインを考えていくことがほとんどですが、今回は彫刻デザインのイメージを抱かれていたこともあり、それを念頭に置いてシグネットリング本体についての打ち合わせを進めていきました。
(打ち合わせ中のメールを読み返していたら、例として”教皇指輪”について触れていました!びっくり。)
打ち合わせによって、今回はあえて通常のバランスよりもフェイスを縦長にして見た目の護符的な印象を強めるためにフェイスサイズは「16.18mm×10mm」。そして形状はRectangle形状とMellow square形状の要素を合わせた「Mellow Rectangleシェイプ」に決定しました。
その他の必要なご希望も伺い、こちらの内容で制作をさせていただけることとなりました。
- 形状:Mellow Rectangle
- フェイスサイズ:16.18mm×10mm
- 素材:Silver925
- 手彫り彫刻:紋章「蛇十字」
まずはシグネットリング本体の造型作業から。「16.18mm×10mm」というバランスは今まで制作してきた経験からすると大きく縦に伸びた形状なので、”初めて見るから新鮮で格好良い”となってしまわぬよう、”いつ見ても格好良い”を目掛けて制作を進めていきます。
そうして無事に造型作業が完了しました。
個性的な形ではありますが、普遍性も感じられるように形作ることができました。
こちらは僕の指に着けた写真です。今まで制作したことがないバランスだったので、こうした写真もお送りしてご確認いただきました。
そして、それと並行して進めていたのが紋章の作成。二匹の蛇がクロスしていることや、それぞれの蛇の頭と尻尾の方角はご指定があったものの、それ以外はデザインに関する直接的なご指定はなく、あとは伺ったシグネットリングへ込めたい意味合いや想いを反映させながらデザインを描いていきました。
また、紋章ですから『紋章の手彫り彫刻”Heraldic engraving”』で説明しているような、盾を主体とする”盾形紋章”やそれを支える盾持ち(サポーター)やモットーなども入れた”紋章一式(Full Coat of Arms)”とは少し毛色が異なるものの、紋章学的な考え方も入れながら紋章図案を作成しました。
そうして描き上がったデザインをご依頼くださった方へ提案。『イメージぴったり』との嬉しいお言葉を頂くことができましたので、いざ手彫り彫刻開始。
まずは彫刻位置を確認するためにシグネットリングへ下書きします。
いよいよタガネを手にして彫り込んでいきます。
生き物を彫刻する際には植物以上に生命力の表現がシビアになります。”紋章ならではの装飾的な雰囲気がありながら、気を抜いたら飛び出してきそうな生命力”を意識して彫り進めていきました。
時間はかかってしまいましたが、何とか無事に彫り終えることができました。
”インタリオ”と呼ばれる沈み彫りの技法で彫刻をしていますので、この状態では生命力を感じられないかもしれませんが、スタンプをするとその本領が発揮されます。
仕上げ磨きをしたら遂に完成です!
紋章のご依頼の際には、紋章の作成やシグネットリングの制作及び紋章の手彫り彫刻に加え、紋章状の発行も行っています。
紋章の造りやそこに込められた意味を記載するとともにその紋章がKUBUSで作成されたものだと証明する紋章状。僕の紋章が刻まれたシグネットリングによるスタンプとサインを入れてお送りしています。
発行した紋章状はHP内の『KUBUS College of Arms』で各紋章ごとにパスワードをかけて保管し、それを知る人だけ(ご依頼をくださったご本人やKUBUS)が閲覧できるように管理しています。
これはシグネットリングの世界をより深く味わっていただけるようにとの演出の一つでもありますが、そうしたエンタメ的な側面だけでなく、それを身に着ける人がご自身のシグネットリングに刻まれている紋章に込められた意味合いや想いをいつでも振り返られることで、その方の心に雨が降っている時に雨宿りができる場所の一つになれたらという僕の願いでもあります。
KUBUSグリーンのリングボックスに入れてご依頼くださった方のもとへ出発する準備を整えていきます。
「行ってらっしゃい。」少しでも力が乗って欲しいと願って、いつもそう声を掛けて箱を閉じています。
無事にお手元に届き、大変に嬉しいお言葉の数々を頂きました。中でも胸をギュッとされたのが『感動をありがとう!』とのお言葉。簡単にこなした作品なんて今まで一つもないけれど、その中でも技術や創造性が試されることの多い制作だったから、それを乗り越えられ、そして制作中に僕が背負いシグネットリングへ託した想いもしっかり届いたのだと分かったこのお言葉は、僕にとってずっしりと重みがあり、物凄く温かく、胸がいっぱいになりました。
Oさま、いつでも制作者として尊重してくれてありがとう。時間がかかってしまっていても楽しみに待ってくださりありがとう。そして、こちらこそ感動を本当にありがとう!
最後に、大変に嬉しいお便りとともにお送りいただいたご着用写真を皆さんにもお裾分け。
実はこちらのご着用写真は僕たちのかねてよりの目標を達成したことを表す写真でもあるんです。遂にそれを実現できました。
やっぱりシグネットリングは特別です。
今回のブログも最後まで読んでくださりありがとうございました!こちらのシグネットリングを彫刻している映像を『Video』ページに掲載していますのでよかったらご覧くださいね。
KUBUS 斎藤
【Gallery】Hand Engraved Mellow Rectangle Signet Ring(Sv925) 「蛇十字の紋章」
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