笑顔を生むシグネットリング
こんにちは。KUBUSの斎藤です。
先日、近所の神社に植わっている桜の花があまりにも綺麗でパシャパシャと写真を撮ってみました。
このブログを書いている今日(2023年4月24日)現在もオーダー受付一時休止中(該当のブログ:『オーダー受付を一時休止します』)ですが、そんな中でも『再開したらオーダーさせてください!』といったようなご連絡を多数頂戴しています。ご依頼をくださりシグネットリングの仕上がりをお待ち頂いている方々はもちろん、こうして多くの方々にKUBUSやシグネットリングを魅力的に感じて頂けていることがとても有難いです。いつも有難うございますm(_ _)m
まだ明確なオーダー受付再開の目処は立っておりませんが、再開の際にはHPでお知らせをしますのでこれからもKUBUSにご注目ください!
日夜制作に励む日々ですが、顕微鏡レベルの細かい作業も多いKUBUS、時には息抜きをしなければとこうしてブログを書いています。「息抜きもKUBUSしてるじゃん」と言われてしまうかもしれませんね。笑
さぁ、今回のブログで紹介をするのは『笑顔を生むシグネットリング』。
ご存知の方も多いかと思いますが、KUBUSは実店舗を持たずに基本的にメールで打ち合わせを行ない、オーダーメイドでシグネットリングを制作させて頂いています。このスタイルの最も大きな利点は、制作モードに集中できるということ。
いわゆるお店という形態で営業時間を公開していると、超制作ゾーンに入り「めちゃめちゃ集中できてるぜ〜!」な時でも、カランコロンカランと扉が開けば「らっしゃいませぇ〜!!」と対応をする必要が出てきてしまいます。
また、KUBUSに限って言えば、その時取り組んでいる制作工程によって集中しやすい時間帯がバラバラで、「営業時間は〇〇時〜△△時」といったように決めることができません。例えば、造型作業と呼んでいるようなシグネットリングをゴリゴリ形作る工程は早朝から夕方くらいまでが最も捗り、彫刻デザインの作成は深夜〜朝方にかけて、彫刻作業となると陽が沈んでから陽が昇り始める頃(夕方〜朝方にかけて)が集中しやすい傾向にあります。
しかし、これも季節や体調によっても変動しますから、今のKUBUSは実店舗を構えて営業するといった形態には向かないんです。
ただ、こうして制作環境を整えることによって生まれたスタイルにも弱点があります。それも大きな弱点です。
それは”笑顔を見られない”ということ。もちろん、大変有難いことにお写真を送ってくださり、それによって笑顔を拝見できることもありますが、シグネットリングとのご対面の瞬間に立ち会うことができないのがこの制作スタイルにおける最大の弱点。
「打ち合わせの時に直接会えないのは問題ないの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それに関してはこれまでの経験によって特殊能力を身に付けた僕にとって壁に感じるポイントではありません。むしろ、そうした制限があるからこそ、どのようなシグネットリングが良いかを広く深く思考していくことができるように感じています。(もちろん、打ち合わせの際にお会いできるのも嬉しいですけどね?)
事前に日時の調整をさせて頂いたうえで工房で直接お会いして打ち合わせを行うこともあるKUBUSですが、山の中ということもあって何度もお越し頂くのにはご不便をおかけしてしまうため、お受け取りの際は郵送でお届けるするのがほとんど。だから、やはりシグネットリングとのご対面の瞬間に立ち会えるのはかなり貴重なこと。今回のブログで紹介をするシグネットリングは、そんなKUBUSでは珍しく、打ち合わせの際だけでなくお受け取りの際にも直接お会いすることができました。
またまた前置きが長くなってしまいましたが、それだけKUBUSから生み出されるシグネットリングの一つ一つにはかけがえのない物語があるのだということをブログを通して感じて頂けたら嬉しいです。
今回は彼女さんへのプレゼントということで、お二人で工房までお越しくださりました(^^) KUBUSのことやシグネットリングの歴史についてご紹介したり、お二人と僕との共通の趣味があることが分かったり、、、。嬉しくて僕ばかりが喋ってしまった記憶があるような無いような。笑 こうして楽しい会話をさせて頂きつつ、シグネットリングのシェイプの選定や採寸をはじめ、どのようなシグネットリングを着けたいと考えてくださっているかを伺いました。
お二人との打ち合わせによって、シグネットリング本体のシェイプとそのフェイスサイズは「Ovalシェイプ(Face size:13mm×11mm)」、素材は「真鍮」と決定。(フェイス部分へ何を彫刻したかについては後ほど紹介しますね!)
それを形にしたのがこちら!
続いて、KUBUSのシグネットリングといえば、オリジナルでデザインしたモノグラムの手彫り彫刻。事前に提案をし、ご決定頂いたモノグラムデザインがこちらです。
笑顔が素敵で明るく優しいお人柄を表現するように、イニシャル「RW」を組み合わせたモノグラムを作成させて頂きました。
それでは、いざ手彫り彫刻!流れるようなデザインを表現しつつ、KUBUSならではのしっかりくっきり深さをつけた彫刻を行なっていきます。
と、その前にここで今回もKUBUSの手彫り彫刻について紹介をしてみようかな。
物凄くシンプルな図ですが、まずはこちらをご覧ください。
KUBUSが主に用いている技法を赤字で示してみました(機械彫りを行うこともありますが、ご指定がある際に限られるため、ここでは赤字で示していません)。
この図をご覧頂くと「手彫り」の中に”マシン”といった単語が含まれているものがあるのがお分かり頂けるかと思います。エングレービングマシンとは、圧縮した空気の力を借りて彫刻していくため、完全に人力で行う彫刻に比べて早く行うことができ、現在では主流らしい?です。
僕はシグネットリング専門で制作をしているため、他のジュエリー一般に関しては全くと言って良いほど分かりませんが、確かにシグネットリングだけに着目してもエングレービングマシンで彫刻されたであろうシグネットリングが増えているように感じています。
「エングレービングマシンで彫刻されたであろう」と予想できるのは、僕がこれまで彫刻を行なってきた経験や、KUBUS以外の完全人力(この言葉はエングレービングマシンと区別するためにKUBUSで使っている名称です)で彫刻されたシグネットリング作品を見てきた経験から、彫刻の質感や深さ、ゆらぎ等がエングレービングマシンと完全人力の手彫り彫刻とでは全く異なるからです。シグネットリングに限って言えば、それらを区別する僕の視覚的能力の精度はかなり高いと思います。笑
このように言うと、あたかもエングレービングマシンが完全人力の手彫り技法に対して劣っているかのように思わせてしまうかもしれませんが、そうではありません。
洋彫りは和彫りのように金槌の力を使って彫刻していくのではなく、手の力だけで押し込んで彫刻していくため、何しろとても時間がかかるんです。それを圧縮した空気の力で補助してくれる訳ですから、彫刻時間は飛躍的に短くなり、それによって作り手への身体の負担が小さくなりますし、ジュエリーの価格を抑えることにも寄与します。素晴らしい発明です。
では、なぜKUBUSでは完全人力の手彫り彫刻に拘るのか。
それは簡単です。格好良いからです。完全人力で彫刻を施されたシグネットリングも、それを彫刻している作り手の姿も。
僕がシグネットリングに衝撃を受けて制作を始めたのも、今でもあの時と変わらずシグネットリングに魅了され続けているのも、”完全人力彫刻のシグネットリング”だからです。
「シグネットリング」という装身具が大好きですが、魂が震えるのはやはり”完全人力彫刻のシグネットリング”だけです。
ただ、これでは僕の主観に寄り過ぎてしまっていますから、ちょいと分析してみました。
エングレービングマシンは先述の通り補助してくれる力があるため、スーッと彫刻することができます。しかし、それに対して完全人力の手彫りは自らの力のみで彫り進めていくために、グッグッグと力をかけた通りに彫った箇所の質感が現れます。ちょっとしたデザインを浅く彫るだけなら完全人力の手彫りでもスーッと彫刻できますが、KUBUSのようにスタンプすることを想定したシグネットリングでは深く彫刻する必要があり、その場合は決してスーッとは彫れません。同じところを何度も何度も力を入れて彫り込んでいくため、時間をかけた分だけその質感が年輪のように彫刻箇所に現れます。
それがシグネットリングから生命力を感じさせる所以です。
あとは、そもそもシグネットリングのように立体的な彫刻を深さをつけて行うのには完全人力の手彫りが向いているのか、エングレービングマシンでそうした彫刻が施されているシグネットリングを僕はまだ見たことがありません。
何度も言いますが、技法そのものを否定するつもりは毛頭ありません。簡単にあっという間にシグネットリングが作れるようになったとしても別に構いません。ただ、僕はそれに興味がないだけ。僕の魂を揺さぶるような素晴らしいシグネットリング作品の数々は、古いものだけでなく現代のものも沢山ありますが、そこに共通しているのは簡単に作っていないということです。敢えて難易度の高いことをしているのではなく、そうしなければ震えるほど素晴らしいシグネットリングにはならないからこうした方法を採っているに過ぎないのです。
彫刻デザインを各ご依頼毎に作成しているのもそう。あらかじめ用意されたフォントや市販のデザインブックから引用したデザインではなく、常に新しくデザインを作り続けているのは”署名の指輪”を生み出すために必要だから。ペアリング等の一部の場合を除いて一度彫ったらもう使われることのないデザインでも多くの時間をかけるのは、彫刻と同じくやはりその分だけデザインに宿るからです。
シグネットリングだけに関わらず、かけがえのない表現を生かすもころすも皆さん次第です。もちろん、表現をし訴えかけ続けることが大前提。表現者は誰よりも自らの表現に対して正直であり続けなければなりません。そして、表現者が実直さを持ち続けられるよう、それを受け取る人々は感受性を持っていなければ、その表現はいとも簡単に崩れ落ちてしまいます。本来ならこうして説明をするのは野暮ったいことですが、それを時には恥ずかしげもなく行うことも必要だと僕は考えています。
ヤバッ!また長々と、、、。汗 今では完全人力手彫り彫刻のシグネットリングを生み出せる作り手は少なくなってしまいました。だからこそ、こうして声を大にしてその魅力を発信しなければ、その声がかき消されてしまうと思い、今回は手彫り彫刻についてかなり前のめりに述べさせて頂きました。
それでは華麗にハンドルを切り、ご依頼品の紹介へUターンします。
そうして完全人力手彫り彫刻が完了しました!
どうでしょうか?曲線のしなやかさと力強さが共存しているのではないかと思います。
スタンプをしたのがこちら。
仕上げ磨きをしたら完成です!
先程お伝えした通り、今回はお受け取りの際にもお二人で工房へお越しくださりました!
シグネットリングとのご対面に立ち会える機会がなかなかない僕は、なんだか照れくさくてお二人の表情を心に刻みたいと顔を上げては目線を逸らしてしまったりとモジモジ。きっとお二人には伝わっていないはずですが、かなりの緊張でおかしくなりそうでした。笑
ラッピングを解いて、いよいよシグネットリングとご対面。お二人にパーッと笑顔が生まれ、工房内が一気にお祝いムードに。嬉しさのあまり舞い上がってしまって、どんな言葉が3人の間で交わされたかハッキリとは覚えていませんが、「いやー。いいねいいね。」「似合ってますね♪」とニヤニヤタイムに酔いしれました。
その際にご着用写真を撮影させて頂きましたので、皆さんにもお裾分け。
本当に嬉しいです。有り難い。
Oさん、ご依頼本当に有難うございました!3人で撮った記念写真は僕の宝物です。
、、、と締めくくるかと思いきや、なんと実はこの日にOさんご自身用のシグネットリングのご依頼も頂きました!!!
それはまた次回のブログで(*^^*)KUBUS斎藤でした〜!
【Gallery】Hand Engraved Oval Signet Ring(Brass)「RW」
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