2023-09-09

印鑑に用いられる字体をアレンジしたモノグラムを彫刻したシグネットリング

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

先日、東京国立近代美術館で開催している『ガウディとサグラダ・ファミリア展』へ制作の合間を縫って行ってきました。

ガウディという人は言わずと知れた超有名人ですし、彼の代表作の一つであるサグラダ・ファミリアも詳しくはなくともご存知の方がほとんどのはず。御多分に洩れず僕もサラッとしか知らず、現在の主任彫刻家が日本人の方だということで、分野は違えど僕も彫刻家の端くれとして何となく繋がりを感じていた程度でした。

軽く予習をして会場へ行ってみると、物凄い人の数にびっくり。「これじゃ人の頭しか見えやしない」というほど。やはりガウディの知名度はすごいですね。

せっかく来たのにほとんど何も観ずには帰れませんから、先にお土産屋さんで買い物を済ませてから、閉館ギリギリの空いてきた頃を見計らって観てきました。

建築のことはちっともわかりませんが、装飾や彫刻についての刺激をたっぷりと浴びることができました。また、これまではあまり知らなかったガウディという人物の歴史を知り、僕もまた世界中にいる彼のファンの一人に仲間入りしました。

さて、本日紹介するのは「印鑑に用いられる字体をアレンジしたモノグラムを彫刻したシグネットリング」です。タイトルが長くなってしまいましたが、漢字をベースにした彫刻のご依頼を頂きました。

KUBUSでは時々漢字のシグネットリングのご依頼を頂きますが、アルファベットとはまた違った雰囲気があってこれもまたとても素敵なんです。

まず、ご依頼をいただくにあたって工房にお越しくださり直接お会いして打ち合わせをさせていただきました。

数年前からKUBUSのシグネットリングを着けたいと思いを寄せてくださっていてこの度遂にお声掛けいただけたと伺い、感激すると共に、「KUBUSが僕の知らないところでも見てもらえるような存在に育っているのだなぁ」と感慨に耽ってしまいました。

直接手指を拝見しながら、号数の採寸やシグネットリングの形状等について打ち合わせを行い、今回は「Ovalシェイプ（フェイスサイズ：13mm×11mm）」「K10YG」で制作させていただけることとなりました。

ポイントとなるモノグラムデザインや彫刻については後ほどお伝えするとして、まずはシグネットリングの造型作業が完了した姿からお目見えします。

シグネットリングの造型作業で最も大切にしているのは、無理に形を作ろうとしないこと。全体が流れるような自然なラインで繋がっていなければどこか違和感を与える見た目になってしまいます。そして、それが着け心地にも影響してしまいます。

つまり、見た目を美しく造型していくのは着け心地のためであり、着け心地の良さを追求していくのは見た目の美しさのため。

そのためには形を作っていくというよりも理想の形へ導いてあげるようなイメージが近いかもしれません。

そして、彫刻作業へと移っていきます。

打ち合わせの際に伺っていたご希望を叶えるべく、シグネットリングの造型作業と並行して彫刻デザインも作成し、事前にご依頼くださった方へご提案して決定したのがこちらのデザインです。

印鑑に用いられる印相体や篆書体をもとに、漢字の「裕」をオリジナルで描かせていただきました。

既存の印相体や篆書体の「裕」の形をオーダーくださった方があまりお好きではないということで、それを崩したり再構築していく必要がありましたが、そもそも印相体や篆書体が普段使用している漢字の姿からある程度距離がある字体のため、崩しすぎてしまうと説明をしたとしても何と描かれているのか分からなくなってしまいます。しかし、少ししか変えないのではオーダーくださった方が抱いていらっしゃる違和感を拭うことができません。

そうした絶妙なバランス感覚でデザインをする必要がありましたが、無事に合格を頂けて一安心。

先ほどの写真はデザイン画ではなくシグネットリングへ下書きをした状態であるため、その全貌が分かりにくいかもしれませんが、この後の写真でそれがお分かりいただけると思います。

それでは、手彫り彫刻が完了した様子をどうぞご覧ください。