toggle

⒍現代への継承と多様性

シグネットリングは長い歴史の中で、用途や役割をその時代に馴染ませながら受け継がれてきました。そして、その本質的な役割は現代においても大きく変わっていません。

かつては権威や身分、契約や信頼を示す道具として用いられてきたこの装身具は、現代でも着用者の価値観や信念、信条を反映し、さらには文化や伝統を象徴する存在として、今でもその存在感を放ち続けています。

現代においては、むしろ過去よりもその在り方は多様です。王室文化の中で伝統として継承されるものから、個人のスタイルや思想を表現する装いの一つとして取り入れられるものまで、幅広い身に着けられ方をされています。

この章では、現代におけるシグネットリングを身に着ける人物の例をいくつか紹介しながら、この装身具がそれを身に着ける人にとっていかに重要なアイコンであり、今なお世界中の多くの人々を惹きつけ続けているかを見ていきます。

フレッド・アステア(Fred Astaire)

フレッド・アステアの肖像画(『You'll never get rich』の宣伝用、1941年)

Fred Astaire/ 1941

フレッド・アステア、映画『ダディ・ロング・レッグス』のスタジオ宣伝用スティル

Fred Astaire/ 1955

20世紀を代表するアメリカのダンサー・俳優。映画ミュージカルの黄金期を支えた存在として知られ、しなやかで洗練されたダンススタイルによって多くの作品に出演しました。紳士的な振る舞いを体現する存在として広く知られ、その名が洗練された男性像の象徴として語られることもあるようです。

品のある装いや、シグネットリングのみを身に着けたその姿には、時代を経てもなお薄れることのない魅力が感じられます。その佇まいに影響を受け、シグネットリングに関心を持った人も少なくないのではないでしょうか。

フランク・シナトラ(Frank Sinatra)

Frank Sinatra & Dean Martin (circa 1963)

Frank Sinatra and Dean Martin / 1963年頃 / Warner Bros. publicity photograph, Public Domain (U.S.)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Frank_Sinatra_&Dean_Martin(circa_1963).jpg

20世紀を代表するアメリカの歌手・俳優。ジャズやポップスの分野で活躍し、『マイ・ウェイ』やジャズ・スタンダードの一曲『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』など、数多くの楽曲を世に送り出しました。

表現力豊かな歌唱と洗練された佇まいは、多くのアーティストに影響を与え、音楽だけでなく映画や舞台においても存在感を示しました。シグネットリングを着用していた人物としても知られ、現在に残る多くの写真や映像において、その姿を確認することができます。

ジョアンナ・ラムリー(Joanna Lumley)

ジョアンナ・ラムリー、動物の屠殺に反対する抗議活動に参加した際の写真

Joanna Lumley / 2014年 / See Li, CC BY 2.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Joanna_Lumley_2014.jpg

イギリスの俳優。モデルとしてキャリアをスタートさせたのち、1960年代後半より映画やテレビドラマへの出演を重ねていきました。“ボンドガール”の一人として登場した『女王陛下の007(1969年)』は映画デビューの作品でした。

ジョアンナ・ラムリー、「女王陛下の007」の劇中

On Her Majesty’s Secret Service / 1968年 / ETH-Bibliothek Zürich, Comet Photo AG, CC BY-SA 4.0
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:On_Her_Majesty’s_Secret_Service_(13).jpg

この写真はボンドガールとして『女王陛下の007(1969年)』に出演した際の一場面です。左手小指に着用しているシグネットリングは印象的で、これが彼女とシグネットリングとの関わりのひとつのきっかけとなっていたのかもしれません。

さまざまなジュエリーや宝飾品を身に着けることの多い女性の場合、その中でシグネットリングを取り入れている姿が見られても、継続して着用されている例はそれほど多くはありません。その中で彼女は、同様のシグネットリングを多くの場面において、そして長年にわたり愛用している姿が確認できます。

エリザベス・バークレー(Elizabeth Berkley)

アメリカの俳優である彼女はテレビドラマ『Saved by the Bell』への出演で広く知られ、その後も映画『ショーガール』などをはじめ、さまざまな作品に出演しています。

公式Instagramではシグネットリングを着用した姿が度々見られ、日々の装いの中で自然に取り入れている様子がうかがえます。他のジュエリーと組み合わせたスタイリングもありますが、その中でもシグネットリングは目を惹く存在感を放っています。シグネットリングをひとつだけ身につけている姿も見られ、彼女にとってシグネットリングが他のジュエリーとは異なる特別な役割を持っているように感じられます。

クリスチャン・ホーナー(Christian Horner)

イギリスのモータースポーツマネージャー。F1チーム、レッドブル・レーシングのチーム代表を2005年から2025年まで務め、チームの躍進を支えてきた人物として知られています。

チーム代表を務めていた際には、チームウェアという統一感の向上に作用するものを着ているからこそ、その中でさりげなく光るシグネットリングが強い存在感を放っていました。

クリス・パイン(Chris Pine)

クリス・パインとガル・ガドット、「ワンダーウーマン 1984」に関する講演、2018年

Chris Pine and Gal Gadot / 2018年 / Gage Skidmore, CC BY-SA 2.0
 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chris_Pine_&Gal_Gadot(41950940080).jpg

アメリカの俳優。映画『スター・トレック』シリーズで主人公ジェームズ・T・カークを演じたことで広く知られ、その後『ワンダーウーマン』などの作品にも出演し、アクションからドラマまで幅広い役柄を演じています。

クラシックな雰囲気を感じさせる佇まいや、力の抜けた自然なスタイルも印象的で、現代の俳優の中でもファッション面で注目される存在の一人です。ひげや長髪など、時代や役柄によってさまざまな風貌を見せていますが、授賞式やインタビューなど多くの場面でシグネットリングを着用する姿が確認できます。そうした装いの積み重ねからは、流行に左右されない一貫した印象を感じさせます。


「⒎あとがき」へ進む>>

<<「⒌ 近代におけるシグネットリングの変遷(16世紀~19世紀)」へ戻る

<<目次へ戻る