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⒎あとがき

このように、シグネットリングは長い歴史の中で単なる装身具としてではなく、身に着ける人の想いや立場、信念を託す器として連綿と受け継がれてきました。

それは時に権威の象徴であり、時に信仰の証といった役割を与えられていましたが、本質的にはやはり想いや価値観を象徴する存在であったと言えます。シグネットリングは、その時々の時代背景や文化、身に着ける人の価値観を映し出しながら古代から現代まで人間と共に歩んできた装身具なのです。

シグネットリングの歴史とは、単に一つのジュエリーとしての歴史ではなく、人間がいかにして「自らを象徴する」という行為に向き合ってきたかの歴史でもあります。そして、それはまだ終わっていません。

今回執筆した『シグネットリングの歴史』をお読みいただくと、シグネットリングに対するあらゆる言説、”シグネットリングは紳士の指輪”、”シグネットリングは男性の指輪”、”シグネットリングを着ける時は他に指輪を着けてはならない”、”シグネットリングは左手の小指に着けるものだ”等々のシグネットリングへの偏った理解の全てが正しく、全てが大間違いだとお分かりいただけたかと思います。

シグネットリングはそんな退屈なものではありません。シグネットリングは自由であり、だからこそシグネットリングは面白いのです。

私は面白いシグネットリングをもっと面白くしたいと日々制作に励んでいます。それがシグネットリングが持つ長く深い歴史に対する敬意であり、文化的、芸術的意義の更なる発展にも繋がるはずだと信じています。

今回の資料やHPに掲載しているKUBUSの作品群をご覧いただいて、シグネットリングを魅力的に感じていただけたなら幸いです。

そして、ご自身を象徴するものとしてシグネットリングを選んでいただける日が来れば、これほど嬉しいことはありません。


著者 KUBUS


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