2024-06-15

息子さんの健やかな成長を願うシグネットリング

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

先日、シグネットリングが登場する映像作品を紹介している「SIGNET RINGS IN FILM」に映画を２本追加しました！

そのうちの一つ『最後のフェルメールナチスを欺いた画家』で描かれているフェルメール贋作事件は、書籍も購入してしまうほどに僕を惹きつけました（映画概要）。一人の制作者として考えさせられることが多いだけでなく、これが実際に起こった事件だとは、まさに事実は小説より奇なりです。シグネットリングが映り込むのはほんの一瞬ですが、物語それ自体が面白い。オススメです。

僕が購入した書籍のタイトルは『私はフェルメール』ですが、2012年に『フェルメールになれなかった男』と改題されたようです。物語を知ると『私はフェルメール』の方がしっくりきます。

それでは、今回もご依頼品紹介へと参りましょう！

今回のブログで紹介をするのは「息子さんの健やかな成長を願うシグネットリング」。息子さんの誕生記念にとご依頼を頂戴し制作させていただきました。

リングゲージをお送りして採寸を行っていただいたり、時には手の写真を送っていただきながら形状やフェイスサイズについてアドバイスをしたり、彫刻デザインについても時には写真を交えながらじっくりと打ち合わせを重ねていきました。

そして、このような内容でシグネットリングを制作させていただけることになりました。

形状：Mellow Square
フェイスサイズ：10.5mm×10.5mm
素材：K9YG
手彫りモノグラム彫刻：「A＋熊本県の緑をイメージした模様やモチーフ」”紋章のようなデザイン＋模様やモチーフ”
側面手彫り彫刻：フェイス正面から見て向かって左側面「太陽のモチーフ」、右側面「風のモチーフ」

打ち合わせの内容を知らない皆さんからすると全くイメージがつかないかもしれませんが、この後制作の模様を紹介していきますのでご安心ください。

例によってシグネットリング本体の造型作業が完了した写真からスタートです！

ご結婚指輪と重ねて着けたいとご希望を伺っていましたので、シグネットリングがご結婚指輪を呑み込んでしまうような存在感になってしまったり、重ねて着けることで指を動かしにくくなってしまってはいけませんから、横への張り出しなど全体的にボリュームを抑えながら制作させていただきました。また、腕部分（着用時に手のひら側にくる部分）の幅や厚みも、打ち合わせの際に教えていただいていたご結婚指輪に合わせた寸法で制作しています。

僕が自らを説明する際に”彫刻家”という表現を使っていますし、独自のデザインを作成してそれを手彫りでシグネットリングへ彫刻しているという希少性から、シグネットリング本体についてはあまり色々とできないと思っている方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、このようにシグネットリングそれ自体もお一人お一人に合わせて制作をさせていただいています。シグネットリングは飾るためのものではなく、着けるために存在していますからもちろんそこにも拘っています。

こうしたシグネットリング本体の造型作業と並行してモノグラムデザインの作成も進めていました。これもなかなかに産みの苦しさを感じる工程ですが、今回も無事に描き上げることができました。

ご依頼くださった方に事前にデザインを提案し、OKをいただけましたのでそれをシグネットリングへこの後控える手彫り彫刻に備えて下書きしていきます。

下書きを終えてモノグラムの輪郭は見えてきましたが、細部はまだまだこれでは書き込めていません。彫刻が完了した際にデザインについても説明をしますね。

さぁ、それではいよいよ彫刻開始です。タガネの刃を研ぎながら集中力を高め、呼吸を整えたら彫刻台へと向かいます（一度に何種類もタガネを使い分けるから、刃を研ぐだけで集中力を使い果たしてしまうこともしばしば。笑）。

相手は金属ですからチョコレートに彫るようにはいきません。力を込めて少しずつ彫り進めていきます。

緻密な彫刻が求められるデザインで、尚且つ「10.5mm×10.5mm」とフェイスサイズも比較的小さめなので一苦労でしたが、無事に彫れました。

ご依頼くださった方の息子さんのイニシャル「A」と「ハルリンドウ」というお花を組み合わせて作成したモノグラムです。

打ち合わせの際には、「A」と組み合わせるのは『熊本県の緑をイメージした模様やモチーフ』というところまでのご指定で、具体的に何にするかは制作を開始するまでお任せいただいていました。ただ、全くのお任せでは単にインターネットで調べて見つけられる熊本県の自然の写真から制作をしていくこととなりますから、ご依頼くださった方が撮影された中で特にそこへいた時に心が動いた場所の写真を数枚お送りいただき、それをヒントにモノグラムを作成していきました。

「ハルリンドウ」はその中に写っていた訳ではないのですが、お送りいただいた写真はどれも深呼吸をしたくなるような瑞々しさがあり、そうした爽やかさを表現するのにぴったりだと考えました。熊本県の阿蘇山や菊池渓谷や草千里に生えているハルリンドウの姿がまさにそうした雰囲気だったんです。

特に草千里の広い空と草原の中に爽やかに咲くハルリンドウの姿は、広い大地の上に一生懸命に立つまだ幼い子供のように見え、お子さんのイニシャルと共に描くのに相応しいと考えました。

一生懸命に立つ「A」を支えるように咲く「ハルリンドウ」。外側へ向かって広がっていくように描くことで息子さんのこれからの健やかな成長を願う想いを込めました。

こうしてギュッと意味を込めて作成したモノグラムが手彫りできましたが、まだこれではこちらのシグネットリングに関しては不十分。続いて側面への彫刻へと移っていきます。

側面へ彫刻するのはご夫婦を表す「太陽」と「風」のモチーフ。まずは旦那さまを表す「太陽」を彫刻していきます。

こちらは旦那さまのご結婚指輪に彫り込まれている太陽のモチーフを参考にしながら、フェイスに彫刻したモノグラムの雰囲気に合うようデザインを作成させていただきました。

続いて、右側面には奥さまを表す「風」のモチーフを。細かい線で構成されているのでデザインが潰れてしまわぬよう気を付けながら彫刻していきます。

奥さまは風のような方だと伺っていましたが、どこかへ流れていくような風にしてしまってはご家族を表すシグネットリングには好ましくありません。そこで、息子さんを包み込むような優しい風となるようデザインを作成させていただきました。

これで全ての彫刻が完了しました！仕上げ磨きをしたら遂に完成です！！

植物が太陽と風に見守られるようにして育つように、ご両親の温かい眼差しと包容力によって息子さんの成長を見守っている姿をシグネットリングで表現させていただきました。

制作させていただいたシグネットリングで初めて押したワックスインプレッションも入れてラッピング。

最後に「KUBUS斎藤が間違いなく制作をし、ラッピングまで行いました」という印として僕のシグネットリングでスタンプをしたら、いってらっしゃい。

Tさま、この度はご依頼本当に有難うございました！制作に時間を要してしまいましたが、制作者を尊重してくださる姿勢をいつもTさまが示してくださったおかげで目一杯シグネットリングで表現をさせていただくことができました。将来息子さんが大きくなった時、Tさまがいつも身に着けているシグネットリングに自分のイニシャルが刻まれていることやそこへ込められた意味合いを知ったらどのような表情をしてくれるか楽しみですね^^

KUBUSのシグネットリングはいつだって愛に包まれています。

こうしてご家族を表すシグネットリングはもちろん、自分のイニシャルを入れたシグネットリングであっても、それを創り上げていく過程では自分が大切にしていることを振り返る時間が必ずあるはずです。周りの大切な人たちや物事、自分への愛や大切にしている信条など、努めてそうしようとしている訳ではないのに自然とポジティブな部分に目を向けてしまいます。もしその中で自分の苦手とする部分を直視しなければならない時があったとしても、それを真っ向から認識しているのですからネガティブな行為ではありません。

そうしたところを起点に生み出されているから、KUBUSのシグネットリングからは温もりが感じられます。時には眩しいくらいの時だってあります。

ご依頼くださる皆さんや僕の愛に包まれているから、KUBUSのシグネットリングは輝いているのです。

少しでも多くの人とそれを分かち合えるよう、これからも作品制作を続けていきます。

KUBUS 斎藤

【Gallery】Hand Engraved Mellow Square Signet Ring(K9YG)「A＋ハルリンドウ」＋「太陽」＋「風」

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