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2025-02-12

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング

こんにちは。KUBUSの斎藤です。

前回の更新は年越しの動画だったので、これが今年に入ってから初めてのブログですね。年始から今日までのKUBUSはと言いますと、大変有り難いことに制作の毎日を過ごしております。今年ものんびりペースな更新頻度になってしまうだろうと思いますが、これからもブログ等の更新を楽しみにしていただけたら嬉しいですm(_ _)m

普段は彫刻デザインからオリジナルで作成させていただくことが多いKUBUSですが、お持ち込みデザインでのご依頼を頂くことも時々あります。今回のブログで紹介するのは、ご依頼くださった方がご自身で作成された家紋を彫刻したシグネットリングです。KUBUSで作成したデザインでないからこそ普段とは少し違う雰囲気の作品になっているのではないかと思います。

ご依頼にあたって、事前にメールでおおまかなご希望を伺ったうえで詳細については工房にお越しいただいて打ち合わせを進めていきました。それによって下記の内容でご依頼を頂けることとなりました。

  • 形状:Circle
  • フェイスサイズ:12mm×12mm
  • 素材:K10YG
  • 手彫り彫刻:家紋(お持ち込みデザイン)

お持ち込みデザインの場合に判断が難しいのが、そのデザインに対してご希望のシグネットリングの形状やフェイスサイズで彫刻面積を十分に確保できるかどうかです。

KUBUSでオリジナルの彫刻デザインを作成させていただく場合は、ご依頼のシグネットリングの形状やフェイスサイズに合わせてデザインを描いていくので問題ありませんが、お持ち込みデザインの場合はそのデザインがご希望のシグネットリングの形状やフェイスサイズに合うか事前に判断しなければなりません。

特に彫刻面積を確保できるかどうかを見誤ってしまうと、彫刻はシグネットリング本体の制作後に行いますから、そこで初めて「やばい、彫れない」と気付くことになってしまいます。

今回のご依頼はご希望のフェイスサイズに対してお持ち込みいただいたデザインが緻密だったため、デザインの一部を省略及びフェイスサイズに合わせて適宜簡略化する場合があるということにご理解いただいた上でご依頼を頂戴しました。

まずはシグネットリング本体の造型作業が完了した状態の写真から。

シグネットリング造型作業完了

シグネットリング造型作業完了_2

5.25号と比較的小さめな号数なためにフェイスサイズが大きめに見えますが、12mm×12mmは決して大きめではないことがこの後お分かりいただけるはずです。笑

今回は造型作業完了時の途中フィッティングを承っておりましたので、一旦お送りしてご試着いただきました。彫刻前の段階から感激をしていただけて一安心^^ 若干の号数調整を行い、いよいよ彫刻作業へ移っていきます。

彫刻を行っていくのはこちらのデザイン。

お持ち込みの家紋デザインを彫刻に備えてシグネットリングへ下書き

どのようなデザインなのかまだ分かりにくいかと思いますが、彫刻が進むにつれてその全容が現れていく様もお楽しみください。

まずは輪郭を彫り込んで全体のバランスを決定していきます。

輪郭彫りを完了したシグネットリング

輪郭彫り後の印影

続いて、各要素を立体的に彫り込んでいきます。

彫刻中の手元

菊部分の立体彫りが完了したシグネットリング

菊の立体彫り後の印影

菊に加えて椿の立体彫りが完了したシグネットリング

菊と椿の立体彫り後の印影

だんだんと迫力が出てきましたね。外側の枠に加えて葉脈等の細部も彫り込んだら彫刻完了です。

菊桃+椿+源氏車輪紋の彫刻を完了したシグネットリング

「菊桃+椿+源氏車輪紋」彫刻完了_スタンプを横に並べて

「菊桃+椿+源氏車輪紋」彫刻完了後の印影

彫刻各段階の印影の比較

彫刻の深さが分かるように角度をつけてシグネットリングを撮影した写真

先程『デザインの一部を省略及びフェイスサイズに合わせて適宜簡略化する場合があるということにご理解いただいた上でご依頼を頂戴しました』と書きましたが、実はご依頼くださった方にも内緒でほぼ完全にお持ち込みいただいたデザインを再現させていただきました。

こうしたサプライズをしたいから敢えて少し遊びを持たせた前置きをしたのではなく、ご依頼を頂いた当初は本当にそうする必要があると感じていました。ですが、それから実際に彫刻を行うまでの間に僕の技術が向上したこともありますし、一番は「こうした方が良い作品になる」というのが分かっているのにそこから逃げるようで嫌だったという意地です。笑

100%完全にお持ち込みいただいたデザインを再現したかったのですが、フェイスサイズとの兼ね合いからどうしても一部彫刻に寄せる必要があり、外側の枠の部分の太さを若干細くしたり、菊桃(スタンプ向かって左側)の葉脈の数、椿(スタンプ向かって右側)のおしべの数を減らして彫刻をさせていただきました。

僕が描いたデザインではないのでここでデザイン画をお見せすることはしませんが、ほぼ完全に再現できて一安心。

さぁ、仕上げ磨きをしたら遂に完成です!!

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_完成写真

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_完成写真2

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_完成写真3

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_完成写真4

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_完成写真5_ワックスインプレッション

仕上がりのご連絡をしたところ、お受け取りも工房までお越しいただけることに!仕上がったシグネットリングとのご対面に立ち会えることは普段なかなかないのでなんだかそわそわしてしまいます。きっとご依頼くださった方もそわそわされているでしょうから、そわそわした二人で待ち合わせ。

工房へ到着してすぐにサプライズを仕込んだシグネットリングをお渡しし、いよいよご対面。緊張の一瞬です。

なんだか照れくさくて目線を逸らしがちになってしまいますが、ラッピングを解いてシグネットリングがご依頼くださった方の目に入る瞬間だけは逃すまいとこっそり凝視。ふわっと表情が明るくなり、その後すぐに驚いたお顔に。サプライズに気付いて一気に素敵な笑顔が広がりました。

はぁ。良かった。失敗を恐れて守りに入ってしまっていたらご期待に応えることしかできていなかっただろうと思います。全力で制作に挑んでいったからこそご期待を超えることができ、感動を生み出すことができました。

さっきまでの妙な緊張感が嘘のように空気が和らぎ、長期間お待ちいただいた苦労や制作の苦労をお互いに労いながら、一つのシグネットリングを囲んで話に花を咲かせました。

お願いして撮影させていただいたご着用写真を皆さんにもお裾分け。

お持ち込みデザインの家紋を彫刻したシグネットリング_ご着用写真

最高に素敵です。KUBUSのリングケースやラッピングがグリーンなことから、それに合わせてグリーンのスーツを着て来てくださったそう。そのお手元に輝くシグネットリングが素晴らしくお似合いになっているのはもちろん、何よりそのお気持ちが本当に嬉しかったです。

Sさん、この度はご依頼本当に有難うございました!お渡しできた日に既に制作中のあれこれについて沢山話してしまいましたが、このブログを通して更にSさんのシグネットリングを好きになっていただけたら嬉しいです。また遊びに来てくださいね。

いつも感じていることですが、自分の大好きなシグネットリングに没頭する日々を過ごせているのも、それを通して皆さんと感動を共有することができているのも、ご依頼くださる皆さんのおかげだと改めて感じました。

コミュニケーションを取るのが得意でない僕にとって、シグネットリングはなくてはならない自己表現の手段でもあります。これからもシグネットリングの力を借りながら皆さんの心にメッセージを届け、そして一緒に心を震わせることができるよう腕や感性を磨き続けていきます。

今回のブログも最後まで読んでくださりありがとうございました!こちらのシグネットリングの彫刻の様子を映像でもまとめましたので併せてご覧ください!


KUBUS 斎藤

【Gallery】Hand Engraved Circle Signet Ring(K10YG)「菊桃+椿+源氏車輪紋(お持ち込みデザイン)」

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