希望のひまわり
近所の畑の一角に季節の花を植えてくれているところがあり、いつもその前を通るのを楽しみにしています。
平日でも近所のちびっ子たちの楽しそうな声が聞こえるようになった頃、そこには沢山の向日葵が太陽に向かって咲き誇るようになり、「今年も夏が来たな」と季節の移ろいを感じていました。畑、照りつける太陽、向日葵、子供たち。絵本から飛び出してきたような景色です。
ちびっ子たちの夏休みも終わり、陽も短くなってきて、半袖で朝晩出歩くのを躊躇うような季節になりました。あれだけ賑やかに咲いていた向日葵も徐々に隙間が目立つようになり、どこか寂しそうにも見えます。
そんな中、まさに今が夏本番と言わんばかりに真っ直ぐに空を見ている向日葵が一輪咲いているのを見つけました。「のんびり屋さんな向日葵もいるんだな」とほのぼのしながらも、夏に咲いていた向日葵たちよりも元気に太陽の光を全身で嬉しそうに浴びている姿に興味を持ち、何となくそれから注目するようになってしまいました。
すっかり近所の人と話す時の最初の話題が「寒いねぇ」になってきても、あの向日葵だけはまだ夏を楽しんでいるようでした。雨の日も風の日も変わらず空を見上げながら。
ギリギリまで我慢していたこたつを遂に出してしまった12月、気付けばあの場所をこれから通ろうとする度に「今日もどうか立っていてくれ」と願うようになっていました。いつか枯れてしまうのは分かっているけれど、あの向日葵がそこにいてくれるのを見ると今日も頑張ろうと力を貰えるような気がして。
その向日葵は花や葉こそ垂れるようになってしまいましたが、何と12月の終わりになっても、『まだだ!』と僕が最初にこの向日葵に心惹かれるようになった時のままに空を向いて真っ直ぐに立っているのです。僕は思わず家へカメラを取りに戻りました。
なんて美しいんだろう。なんて格好良いんだろう。この向日葵を見る度に胸が熱くなります。僕は勝手にこの向日葵に”希望のひまわり”と名付けました。
希望のひまわりは遂に年を越しました。新年の太陽を体いっぱいに浴びています。
KUBUS 斎藤