太陽のシグネットリング
こんにちは。KUBUSの斎藤です。
先月はKUBUS唯一のお取扱店である広島県のテーラーショップ「The My Way」さんが10周年を迎えられるということでそのお祝いに広島県へ行ってきました!その旅の模様はまた改めてブログにしますので楽しみにしていてくださいね!
先日、ある展覧会へ行ってきました。向かったのは原宿にある太田記念美術館で12月8日まで開催されていた『広重ブルー』。
僕が敬愛するフィンセント・ファン・ゴッホにも影響を与えた歌川広重。この展覧会はそんな日本を代表する浮世絵師である歌川広重の作品の中で、「ベロ藍」と呼ばれる顔料を用いた鮮やかな青色が特徴的な作品にフォーカスを当てたものでした。
間近にした広重ブルーの作品たちは、事前にインターネットで予習した際に感じたよりも遥かに澄んで見え、作品から風が吹いてくるような感覚を受けました。
もちろん、色だけでなく構図の美しさや大胆さも魅力的で、広重がどうしてそのように景色を切り取りデフォルメしたのか想像を膨らませながら鑑賞するのもとても楽しかったです。
きっと年内はこれが最後の美術館探訪です。日記のように気楽に書いていたので、大した情報や知識の共有はほとんどできませんでしたが、「オープニングトークも楽しみにしています」といったご感想も時々頂けて嬉しかったです。制作活動を止めないためにも、来年も素敵な作品に会いに各地へ出かけて行きたいと思います。これからも楽しみにしていてくださいね。
それでは、今回もご依頼品紹介スタートです!
今回紹介するのは「太陽のシグネットリング」。ご出産の記念にとご依頼を頂きました。
リングゲージをお送りして号数の採寸を行っていただいたり、時には手や指のお写真を送っていただくなどしながらメールで「どのようなシグネットリングがお好みか」や「どのような意味や想いの込められたシグネットリングにしたいか」などコミュニケーションを重ね、下記の内容でご依頼を頂けることとなりました。
- 形状:Oval
- フェイスサイズ:13mm×11mm
- 素材:K9YG
- 手彫りモノグラム彫刻:「AHJ」+「太陽(歯車)」”紋章のようなデザイン+模様やモチーフ”
- 側面部手彫り彫刻(左右両側面):「Y」
まずは例によってシグネットリング本体の造型作業が完了した状態の写真からスタートです。
ワンポイントではなく広く側面へ彫刻を行っていくため、それに備えてくびれ加減を緩やかにすることで彫刻面積を確保しました。その意味はこの後の彫刻工程でお分かりいただけるかと思います。
もちろん外側だけを作り込むのではなく、快適にご着用いただけるよう内側も滑らかに形作っています。所謂”指馴染み”というやつです。これがしっかりされていない指輪は着け心地が悪くなってしまいます。
こうしてシグネットリング本体の造型作業を行うのと並行して各部の彫刻デザインの作成も進めていました。描き上がったデザインをご依頼くださった方へ提案し、無事に合格を頂けたので、続いて彫刻作業へと移っていきます。
まずはフェイスから。「AHJ」+「太陽(歯車)」で作成したモノグラムをシグネットリングへ下書きしていきます。
そのデザインがこちら!
、、、と言っても緻密なデザインなので下書き程度では何がどうなっているのか分かりにくいですね。汗 デザインについては後ほど彫り終わった際にご紹介します。
それでは、いざ彫刻開始!
細かいデザインであっても浅く繊細に彫るのなら簡単ですが、KUBUSの場合は繊細さも表現しながらそれと同時に深さも付けた彫刻を行っていくため、その分彫刻難度も上昇します。それに伴って時間もかかってしまいますが、他とは完全に異なる特別なシグネットリングにするためには避けられません。
よし!無事に彫れました。
ご家族三人のイニシャル「AHJ」がしっかり組み合わさったデザインにすることで、ご家族の一体感を表現していきました。ただ、それを表現するために単に力強い描き方にしてしまうのでは、お子さんが誕生したことを記念するシグネットリングとしては相応しくないと考え、植物のような生命力を感じさせる模様も入れながら描き、新しい命の誕生を祝福する意味合いも込めました。
また、モノグラムの上部に描いたのは「太陽(歯車)」で、これはご依頼くださった方から打ち合わせの際に伺ったお子さんを象徴するモチーフです。頭上に暗雲が立ち込めそうな時でもそれを吹き飛ばしてくれるように。そして、太陽の光芒はご家族三人の誕生数を合わせた14枚の歯を持つ「歯車」でもあり、皆さんで力を合わせて末長く時を刻んでいけるようにと願いを込めました。
※「反転彫り(スタンプをした際に正しい向きになるようデザインを反転させてシグネットリングへ彫刻すること)」で彫刻をしています。
フェイスへ彫刻したモノグラムだけでもしっかりと存在感がありますが、まだこれで終わりではございません。続いて側面へも彫刻を行い、更にスペシャルなシグネットリングにしていきます。
側面へ彫刻したのはご依頼くださった方のお母さまのイニシャル「Y」をもとにしたデザイン。フェイスに彫刻したご家族三人のイニシャルを包み、お孫さんの誕生を祝し、そしてご出産を乗り越えた娘さんを抱きしめるように、華やかで温かみのあるデザインを作成・彫刻させていただきました。
同様のデザインを反転させて反対側にも彫刻しました。
まるで一方の写真を編集で反転したかのように綺麗に彫刻をすることができました。
全ての彫刻が完了し、仕上げの研磨をしたら遂に完成です!!
フェイス裏面にはお子さんへのメッセージを(こちらは機械彫りです)。
将来お子さんがシグネットリング引き継いだ時にこのメッセージも一緒に受け取るなんて、まるでタイムカプセルのようです。きっとその頃にはこのメッセージやシグネットリングの意味合いが更に深まっているはずです。
ご依頼くださったYさま、この度は本当に有難うございました!『精魂が込められたシグネットリング』とのお言葉に、心を込めて制作したのが作品から伝わったのだととても嬉しく感じています。また、着け心地に関しても滑らかで全く違和感がないと伺い安心しました。小さなお子さんと一緒に過ごすのに指輪が気になってしまってはいけませんからね^^(でも、普段に比べて何かを大きく変えた訳ではないんです。そうです、KUBUSのシグネットリングの着け心地の良さは標準搭載なのだという自慢です。笑)Yさまが人生で最も頑張った日を讃え、お子さんの誕生を祝したこちらのシグネットリングが、お子さんの次にYさまにとっての太陽のような存在となるよう願っています。
ブログを読んでいただいていると分かると思いますが、シグネットリングがどのような存在かはその人によって異なります。だから同じ姿であることに意味がある時以外は同じであってはいけないのです。それなのに事前に用意されたフォントから選べるだけだったり、既存の図案集の中から選べるだけなのは僕からするととても違和感があります。だって、シグネットリングは着用者を象徴する装身具なのだから。お一人お一人の物語が込められた特別なシグネットリングこそ本物のシグネットリングだと信じています。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!こちらのシグネットリングの彫刻の様子を映像でもまとめましたので併せてご覧ください!
KUBUS 斎藤
【Gallery】Hand Engraved Oval Signet Ring(K9YG)「AHJ+太陽(歯車)」+「Y(側面彫刻)」
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