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紋章の手彫り彫刻”Heraldic engraving”

いきなりですが、”KUBUS紋章院”を開設します。

と言っても、「紋章?紋章院?」何のことだか分かりにくいと思いますので、ここで紋章についての歴史を簡単にですがご紹介すると共に、KUBUSでの紋章彫りについてお伝えしていきます。

Contents

  1. 紋章の始まり
  2. 紋章の専門家である紋章官の誕生
  3. 紋章官を擁する組織、紋章院
  4. なぜ、”KUBUS紋章院”なのか
  5. KUBUS紋章院が行うこと
  6. 紋章の作成費用
  7. 最後に

紋章の始まり

紋章がいつどこで発祥したのかということに関しては諸説あり、正確にはまだ分かっていませんが、12世紀半ばに低地地方(ヨーロッパ大陸北西部の地域やスコットランドの南部地方の地域を表す呼称)やフランス周辺の北ヨーロッパのどこかで現れたと言われています。

戦士が甲冑で全身を包むようになり、戦闘中に敵味方の区別が難しくなったため、それを見分けるために武具に紋章が描かれるようになりました。

それが世代を超えて引き継がれていったために、紋章は個人の所属等を表すと同時に家系も表すものとなっていきました。

紋章の専門家である紋章官の誕生

15世紀までに、紋章官(herald)は紋章のあらゆる事柄についての専門家として活動していたと言われています。

ヨーロッパを股にかけて開催されていたトーナメント(馬上槍試合)において、参加者たちの紋章を識別するために、紋章の所有状況をまとめた巻物を作成したり、また、貴族の家中の一員となり、主人の代理として、トーナメントや騎士道に関する様々な情報を集めていたと考えられています。

その後、紋章の重要性が強まっていき、例えば、貴族の葬儀についての細部に至るまでもを紋章官が取り扱うようにまでなっていきました。

近代では、国王の戴冠式などの国家的な重要行事において助言をしたりもしています。

紋章官を擁する組織、紋章院

こうして紋章の重要性が高まり、公的な要素が強まっていったことで、それを管理する紋章院と呼ばれる組織が1484年にロンドンで設立されました。紋章院では紋章の許認可を始めとする管理に関わる全てを担当していて、イングランド、ウェールズ及び北アイルランドの国民に新たな紋章を授与するほか、国王や王家の典礼を司る英国王直属の公的な機関です。

中世以降、ほとんどの国から紋章に関する公的機関は姿を消しましたが、このロンドンに本拠を置く紋章院は現在でも存続をしています。

この他にも、スコットランドにはスコットランド紋章局、カナダにはカナダ紋章庁、南アフリカには南アフリカ紋章支局と呼ばれる紋章に関する機関があります。

なぜ、”KUBUS紋章院”なのか

紀元前3500年頃から存在している、指輪の起源とも言われているシグネットリング。それが最も栄えたのは中世ヨーロッパ(5世紀〜15世紀頃)の時代で、これまでにお伝えしてきた紋章が発展した時代と重なります(シグネットリングの歴史については『The History of Signet Ring』のページをご参照ください)。

つまり、シグネットリングと紋章は切っても切れない縁で繋がっていると言えます。

これまで、KUBUSではご依頼をくださる方のイニシャルやご家族の方のイニシャル、大切にしているモットーの頭文字やモチーフ等を組み合わせたモノグラムをオリジナルで作成し、それをシグネットリングへ手彫りしてきました。

もちろん、モノグラムもシグネットリングの長い歴史上、シグネットリングへ刻まれてきた大切なものの一つで、それを理解した上でオリジナルでモノグラムデザインを作成し、それを手彫りさせて頂いてきました。

更にそれを推し進め、紋章の作成・発行やシグネットリングへの手彫りをKUBUSで行うべく、時間をかけて準備を行ってきました。

これまで行ってきた、ご依頼くださった方の想いを込めてモノグラムを作成し、それをシグネットリングへ手彫りで込めるということと同じように、単に紋章デザインとして整っているだけで良いのではなく、意味や想いが表現されていて、そして、独創的である必要があります。

そのためには、手彫りの技術はもちろん、紋章学を学び紋章の歴史や仕組みを理解し、その上で紋章をオリジナルで作成できなくてはなりません。

それは、ご着用くださる方の”signature(署名の)ring(指輪)”でなくては意味がないから。これまでKUBUSが「これだけは曲げてはならない」と強く心へ刻み表現をし続けてきたことです。

それを紋章という、シグネットリングと同じく恐ろしく気の遠くなるような長い歴史を持つフィールドでも表現をしていくべく、それらの歴史を刻んできた人々に敬意を表し、ここに”KUBUS紋章院”を設立することを宣言します。

KUBUS紋章院が行うこと

  1. 紋章の作成・発行
  2. シグネットリングの制作・作成した紋章の手彫り

大きく分けてこの2つを行っていきます。

⒈紋章の作成・発行

これまでモノグラムの作成をさせて頂いてきたのと同じように、ご依頼をくださった方とのコミュニケーションの中で「どのような意味をシグネットリングへ込めたいか」ということを伺いながらデザインの方向性等の打ち合わせを行っていきます。

じっくりと時間をかけてご依頼をくださった方とコミュニケーションをとり、特別な紋章を作成させて頂きます。

そして、ご依頼をくださった方がいつでもご自身の紋章について閲覧ができるように、その紋章の各部についての説明や込めた意味、発行年等をHP内の『KUBUS College of Arms』へ記載します。そのページには各紋章ごとにパスワードをかけ、それをご存知の方(ご依頼をくださったご本人やそのご家族等)とKUBUSのみが閲覧できるようにします(私、KUBUS斎藤の紋章については例としてパスワードを公開し、どなたでも閲覧できるようにしております。よろしければご覧ください。「pass:kubuscoa」)。

紋章を作成させて頂いた方のパートナーやお子さんが将来ご依頼をくださった際には、紋章学の知識を参考にしながら、その紋章をもとにご家族の紋章を作成させて頂くといったことも可能です。

⒉シグネットリングの制作・作成した紋章の手彫り

⒈で作成・発行した紋章を、同じくご希望を伺いながら制作したシグネットリングへ手彫りで込めさせて頂きます(KUBUSで用いている伝統的な手彫り技法についてはこちらのページをご覧ください『KUBUSの手彫り彫刻技法』)。

モノグラムの手彫りを行うシグネットリングも全てオリジナルで制作をさせて頂いているため、ご依頼確定からお届けまでの明確な期間をお伝えすることが難しく、「あくまでも目安」ということで、その時々の状況に合わせてお伝えしています。

それに対して、紋章の手彫りを行うシグネットリングに関しては、それよりも更に様々な情報を得る必要があり、それを手彫りすること自体にも多くの時間を要するため、目安の期間を設けることも難しいということをご理解頂ければ幸いです。

紋章の作成費用(手彫り施工料含む)

上記の⒈と⒉を行う「紋章作成・発行+シグネットリングへの手彫り施工料」は、その紋章の複雑さ等によって異なります。そのため、目安となる紋章デザインを例にとってお伝えします。詳しくはお問い合わせを頂いてから発行する見積書にてお伝えいたします。※下記の価格は、シグネットリング本体の価格を含まないものです。

盾形紋章・・・¥150,000+tax〜

紋章一式(Full Coat of Arms)・・・¥250,000+tax〜

最後に

このように、紋章をオリジナルで作成・発行し、シグネットリングへ手彫りをするためには、それらの歴史ほどではないにしろ多くの時間や工程を必要とします。ご依頼をご検討くださる皆さまには煩雑で分かりにくいなと思わせてしまうかもしれません。

しかし、全てと特異な紋章を手彫りしたシグネットリングを創り上げるためには、一つ一つの工程にじっくりと時間をかけ、ご依頼をくださるお一人お一人とKUBUSとで一緒に歩んでいかなければなりません。

それは、ご着用くださる方の”signature(署名の)ring(指輪)”でなくては意味がないから。

ご質問等ありましたらお気軽にご連絡くださいませ。一緒に特別なシグネットリングを創り上げていきましょう。



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【参考文献】

  1. スティーヴン・スレイター(著),朝治啓三(監修,翻訳).『【図説】紋章学事典』.創元社,2019
  2. 秦野啓(著),福地貴子(イラスト).『図解 紋章(F-Files No.038)』.新紀元社,2013

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