“Full Coat of Arms”紋章一式を手彫りしたシグネットリング
いきなりですが、”KUBUS紋章院”を開設します。
と言っても、「紋章?紋章院?」何のことだか分かりにくいと思いますし、紋章はシグネットリングと同様に長い歴史を持つ文化の一つです。それをこのページでお伝えするにはあまりにも長くなってしまうため、別途専用のページを作りました。よろしければ本ブログ記事をお読み頂く前にこちらをご覧くださいませm(_ _)m
<紋章の手彫り彫刻”Heraldic engraving”>
おかえりなさい。長かったでしょう?笑 よくぞまた戻ってきてくださりました!
このように長い歴史を持つ紋章。先程のページでお伝えしたように”紋章学”という学問がある程に奥深い世界なんです。
どうしてもその出自が”戦闘”にあるため、シグネットリングと密接に関わっているのに、学べば学ぶほどにKUBUSとは縁遠いものだと感じてしまっていました。また、紋章が最も発展した理由の一つである、”自らの権力やステータスを表しそれを誇示するためのものであった”ということも、更にKUBUSの表現方法の一つとして紋章を取り入れることを躊躇させる大きな原因となっていました。
それは、KUBUSが目指している夢が「世界平和」であるから。どうやってそれを実現する一つとして紋章を捉え、理解し、表現をすれば良いか。かなり頭を悩ませる必要がありました。
ですが、ようやく閃いたんです。
その弾き出したように感じた答えは、以前から日々KUBUSがやり続けていることの中にありました。
モノグラムデザインと同じように、ご依頼くださった方の想いを伺い、そこにKUBUSの色や味や香りを乗せて表現をすれば良いのだと。
例えば、剣は誰かを傷つけるためではなく、「自身の信念を大切にする決意として」描けば良いし、「その剣を花束に持ち替えて」描いてしまっても良い。
自由に、そして、平和に。
これまでモノグラムデザインを通して、ご依頼をくださった皆さんと一緒にKUBUSがやってきたことです。
もちろん、紋章の歴史や紋章学の知識がない状態では、見た目としては整っていたとしても、中身は空っぽで単なる真似ごとになってしまいます。それでは大切にしたいことが表現できません。
分厚い本を読み、調べ、それと並行して、紋章はモノグラムとはまた異なる手彫りの技術も必要であるため、その知識と技術を磨くために調べ、実践し、失敗し、また実践しを繰り返してきました。
まずは自分用に創らなければ、僕が何を考え、何をどのように表現していこうとしているのかが皆さんに伝わらないと思い、ご依頼品制作の合間に少しずつ。
構想から数年、こっそりじっくり温めてきました。
そうして、ようやく形にすることができました。
今回は、KUBUS斎藤が自分用に創ったということで、その制作過程はお見せしません。景気良く、完成した姿からお見せします。(自分用だから制作中に写真を撮るということをすっかり忘れていたという理由もあります。笑)
それではどうぞ!
今まで何度か制作をしてきた『Mellow Square Signet Ring(K18YG)(Face size:13mm×13mm)』に全てと特異に作成した”紋章一式(Full Coat of Arms)”を手彫りしました。
”紋章一式(Full Coat of Arms)”とは、
- 盾(エスカッシャン(Escutcheon))
- 兜(ヘルメット(Helmet))
- 盾持ち(サポーター(Supporter))
- 標語(モットー(Motto))
等の複数の構成要素からなる紋章で”Achievement”とも呼ばれます。
KUBUS斎藤の紋章の詳細については、紋章の各部についての説明や込めた意味、発行年等を記載する『KUBUS College of Arms』へ譲るとして、ここでは少し技術的なことをお伝えしてみたいと思います。
僕が自分用に創るからには様々な挑戦をしなければなりません。例えば、手彫りをする時に他よりも深く彫った箇所がスタンプをした際には手前に浮き出てきます。
一般的に、シグネットリングへ手彫りすることを考えると、複数の要素が前後に重なるデザインは避けた方が彫りやすいんです。このシグネットリングのように全体的に彫りが深い場合は特にそうです。なぜなら、基準となる部分の彫りが深ければ、それよりも手前にくる要素は更に深く彫り込まなくてはいけないから。
この紋章では、奥から順に①フェニックスの両翼、②サポーター(盾持ち)、③モットーが書かれているリボン、といったように最も多いところで3つの要素が重なっています。つまり、モットーが書かれているリボンの彫りを最も深くする必要があるということです。
しかし、動物はその立体感が肝となるため、やはり手彫りする際には深く彫り込む必要があります。それよりも手前に来るものは更に深さをつけなければなりません。
紋章を全体的に深く彫り込むことはやっぱりしたい。でも、複数の要素を前後に重ねるといった手彫りをする上で難易度の高いこともしてみたい。
紋章それ自体に込めた意味だけでなく、そんな技術的なことにまで我がままに創ったのがこのシグネットリングです。
これまで、僕が一番最初に手彫りしたシグネットリングを小指に着用してきていますが、そこに今回のシグネットリングが仲間入りしました。せっかくなので着用写真も載せますね。
やはり、KUBUS斎藤と言えばシグネットリングへ手彫りをしている姿。最もスタイルが現れているのではないかと思います。
同じゴールドでも、小指は「K9」薬指は「K18」と純度が異なるため、色合いにも個性があって着けた時に奥行きが出ますね。
小指に着けているシグネットリングが、今のKUBUSのスタイルを歩み出す一歩目として背中を押してくれたように、今回新たに薬指に迎えたこの紋章一式を手彫りしたシグネットリングが、そこに込めている意味と同じく、KUBUSを飛躍させてくれるシグネットリングとなりますように。
KUBUS 斎藤
【Gallery】Hand Engraved Mellow Square Signet Ring「Full Coat of Arms」(K18YG)
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